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もうひとつの幻想 最終話

 こうして私はカッシュカッシュでしばし皆と談笑しながら、美味しいおやつを堪能した。


 そしてその後はユナさんの研究所に戻り、早速精霊についての研究を開始。
 暫くは冒険を休み、ユナさんや、彼女の助手の方々と主に研究、そして魔法の鍛錬に没頭するつもりだ。
 ハーブも、めでたくハウリナちゃん教育係に任命され、一緒に魔法やモンスターの勉強に励んでいる。
 ハニーも暫くはカッシュカッシュで働くそうだ。


 そしてあのもやもやもユナさんの働きにより、ラムザの人達と一緒に火山へ旅立っていった。
 ちなみにその時もやもやを連れて行ったのは、あのカッシュカッシュで会ったケイ君や、クイット達らしい。
 きっと彼らなら無事にもやもやを火山へと送り届けてくれるだろう。


 そして、洞窟で見た赤い目をした人物の話をユナさんにした次の日には、街中にお尋ね者として赤い目の人物の張り紙が張られた。
 これでもしこの街の中に赤い目をした人がいれば、取り調べを受けるだろう。
 これで少しはあの洞窟での出来事についての手掛かりが集まればいいと思う。


 そして私はここ数日のいろんな事を報告すべくそこを訪れた。
 相変わらず真っ白な部屋に真っ白な道具類。


 そして真っ白なベッドの上に眠る人物。
 彼女は優しげな瞳で私に問いかけた。


(今度はどんな冒険をしてきたの?)


「えっとね…お母さん」

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もうひとつの幻想 59

「ハーブ! 待ったか?」
 広場の入り口では既にハーブが待っていた。
 今日は夕刻にこのシアグラード広場の入り口でハーブと待ち合わせをしていたのだ。
 ユナさんとの話が予想以上に長引き、少し待ち合わせに遅れてしまった。


「遅いな! ハニーが待ってるよ!」
 ハーブは腰に手を当てぷりぷりと怒ったがそれも束の間、すぐに笑顔になった。
「なんか忙しかったから久しぶりにハニーに会う気がするなぁ。昨日の朝には会った筈なのにさ」
 彼女は少し照れくさそうに笑うと、私の前を歩き始めた。


 今日この広場に来たのはハーブの相棒、ハニーの働く店に行く為だ。
 その店は広場の出店のような感じで、人手が不足していたため、急遽バイトを募集していたらしい。
 そこでハニーがバイトをしにいったという事だ。
 しかしハニーはなかなか仕事役に立ちそうにないがな。
 店の留守番くらいはできそうだが。


 首を捻る私をよそにハーブは意気揚々と歩いていく。
 彼女は広場の真ん中ではなく、どんどん端の方へ向かった。
 その出店は広場の中の、あまり目立たない場所にあるようだ。
 穴場スポットといったところか?


 全体的にとても人が多い広場だったが、ハーブが歩いて行く先はあまり人が多くない。
 広場を仕切る小さな柵の向こうの木から枝が伸びており、少し陰になっている。
 なかなかに涼しげな場所だ。


 そしてその陰に四角いテントのような物が現れ、そのテントから迫り出すようにしてカウンターのような物が設置してある。
 そのカウンターから少し離れた所に椅子や小さなテーブルがあり、そこに客らしき人が数人座っていたのだが、私はそこに見知った姿を捉えた。


「リク!」
 私が言うと、その緑の上着がびくっと震え、振り返った顔は見紛う事なくリクの顔である。
「お前、今日は仕事だって言ってなかったか?」
 朝フローラから聞いた話ではそうだったが、今彼は椅子に陣取り、何やら香ばしい香り漂う何かを摘んでいる。


 私の声を聞き、他の面々も振り返った。
 一人青い髪をした2枚のローブの上に鎧を着るといった不思議な格好の青年は知らない顔だったが、他には獣と人間とが合わさったような種族であるヴィクマー族の青年、ブレイズと、幼いながらも召還術という高等魔術を操る少年、シーがいた。
 彼らも同様に何やらお菓子らしき物を摘んでいる。


 ブレイズやシーもラムザの仲間であり、青い髪の彼もラムザの仲間なのだろう。
 彼は新入りだろうか。


 そして私は一つ異様な物を捉えた。
「手?!」


 そう、彼らの後ろには何やら不気味な手の形をした物がふわふわと浮いていたのだ。
 黒い肌に血のように赤い文様の入った手。
 何やらとても間が禍々しい物に見える。
 ただ私がそれを見て顔を顰めた事に気づいた青い髪の青年が慌ててそれを隠した。


「僕は新しくラムザに入ったケイという者ですが…。あなたは一体?」
 ちゃんと先に名を名乗ったところは好印象だが、その服装といい、さっき押し隠した手のようなものといいなんとも怪しい奴だ。
 しかし、怪しんでばかりいるのもよくないだろう。


 それにしてもケイと言う名前はどこかで聞いたような気がするが、気のせいだろうか。

もうひとつの幻想 58

「そこ、確かに最近夜になるとドラゴンらしき大きな陰が近づいてくるっていう話を聞いたわ。あながち、彼の話ほんとだったりして」
「そうだよ! 僕の話はほんと! 僕は人間からはマグナリアスって呼ばれているドラゴンの子供なんだよ!!」


「マグナリアス!」
 ユナさんが目を見開いた。
 何だ、それは。
 確かにその名前はマグマを彷彿とさせる熱そうな名前ではあるが。
 それがドラゴンの名前なのだろうか?
 ドラゴンに会うというのは滅多にある事ではないので、私はドラゴンについての知識はほとんどないのだ。


「マグナリアスは伝説とされているドラゴンじゃない! 本当にそれがいるの?」
「もちろんだよ! 実際に僕がそうだもの」
 ユナさんはまたここで考え込んでしまう。


「そうだ! 僕を元の場所に返してくれるんなら、お父さんやお母さんに会えると思うよ! ねぇ! 僕を元の体に戻して!」
「なんですって?!」
 そのときのユナさんの迫力たるやすばらしかった。
 あまりの勢いにもやもやの彼が吹き飛ばされてしまったくらいだ。


「その、熱そうなドラゴンってそんな珍しいんですか?」
「熱そうなって、あなた…。珍しいなんてものじゃないわ! 伝説なのよ! 生きているかどうかもわからないくらいだったんだから!」
 ユナさんの熱意には相当なものがある。
 きっとそのドラゴンはかなり有名ではあるが、実際に見た人というのは少ないのだろう。
 そんなに珍しいならぜひ見てみたいものだ。


「分かったわ。こちらからラムザの方に仕事を作っておく。ちょっとあなたはここにいなさい」 
 ユナさんはもやもやを手招きすると、私を見た。


「それでルビーさんは、精霊の研究を手伝って頂戴。約束したわよね?」
 そうであった。
 あの洞窟に入る前、条件の一つに私の精霊を研究させてほしいとユナさんが言っていたっけ。
 つまりは私があのもやもやを送り届ける事はできなさそうだ。
 だからユナさんはわざわざラムザに仕事の要請を出すと言っているのか。


「えぇ、ぜひ、ここで精霊の研究をさせてください」
 私はドラゴンなどにあまり興味はない。
 それよりか目前の精霊について研究している方が性に合っている。


「それなら、早速…」
「あぁ、ちょっと待ってください!」
 すぐにでも研究についての話を始めようとしたユナさんだったが、私はそれを遮った。


「実はこの後ちょっと用があるんです。その用を済ませたらこちらに向かいますので、少し待ってもらえませんか?」
「あぁ、そんな事なら」
 ユナさんはそう言いつつも少し不満げな表情をしたが、すぐに笑顔を浮かべた。

もうひとつの幻想 57

「これが、例の?」
 フロートが息を呑んだ。


 鞄は相変わらず時折もぞもぞと不気味に動く。
 鞄はチャックでぴっちり塞いであり、中のもやもやが出てくる気配はない。


「これ、このまま放っておくわけにはいかないですよね」
 フローラが少し青ざめた顔で呟く。
 その言葉を聞いてハーブが悲しげな表情を浮かべた。 
 あの鞄の中にはハーブ大好物のお菓子がいろいろと詰まっているのだ。
 それを手放したくはないのだろう。


「それなら開ける他ないな。私が開けてやる」
 すると、フロートが肩を回しながら、前へ進み出た。
 こういう時はとてもフロートが頼もしく見える。
 よかった、彼女が単純な奴で。


「こーいうのは思い切りが大事だ。一気に開けるぞ!」
 フロートは鞄を手にをかけ、振り返った。
 私たちは思わずカウンターにしがみつく。
「爆発する訳じゃあるまいし。んなびびるなよ」と、言うフロートの顔も引き攣っている。  
「あ、開けるなら早く開けろ!」
 私は少し上擦っている自分の声に、少しイラつきながらも、フロートに言った。


 みんな大げさなほど腰が引けている。
 私もそんな中の一人なのが情けない。


「んじゃ、開けるぞ!」
 フロートがチャックの摘みに手をかける。
 ゴクリと唾を呑む私達。


 そしてフロートはえいやっとばかりにチャックを開けた。
 途端白いもやもやが勢いよく飛び出す。
「うわぁあぁっ、わわぁっ!」
 フロートがばたばたと私たちの元へ帰ってくる。


 そして、全員がひしと見つめる中、もやもやがこちらを向いた。


 つまりは。

 もやもやに。

 顔が。

 あったのである。


 :


「はぁ、これが…ドラゴン?」


 私の前に座るユナさんは全く信じていない目で、私、そして私の横に浮かぶもやもやを見た。
 私は今ユナさんの研究所の応接室で、ユナさんと向き合って座っている。


 ハーブは人魚のミアラに報告に、フローラはラムザの仕事、フロートは野暮用、クイットはキトンと一緒にどこかへ出かけていった。
 そして私がユナさんへ報告に行く係となったのだ。


「その…自称ドラゴンの魂とかいうそれが最奥の宝箱に入っていた、と」
 私は今洞窟内での冒険をユナさんに報告したところだ。


 そして今度はもやもやについて話している。
 そのもやもやというのは顔があり、そして ―――
「そうだよ! 何でみんな信じてくれないんだ! 僕はドラゴンだぞ! 悪い奴のせいで体をとられちゃったんだ! どうにかしてよ! 僕を助けてよ!」
 ――― きぃきぃとそれは喋った。


 そう、それは昨日まで何の変哲もないもやもやだったというのに、今日鞄から出してみれば顔と小さな手のような突起が付いていたのである。
 手、といっても同じようなもやもやで、相変わらずその体を触る事はできなかったのだけれど。
 ちなみにその顔というのはくりくりした黒い瞳に、小さな口が引っ付いているだけで、牙が生えているとか、翼があるとか、そういうドラゴンっぽいところは微塵もない。
 顔がついた、ただのもやもやである。


「そう、ドラゴンね、なるほど。アナタの研究もする必要があるかしら」とユナさんがもやもやを一睨みすると彼は思いきり縮こまってしまった。
 まったく、気が小さいなら出しゃばるんじゃない。


「とにかく、この間街に出現した光のドラゴンの話を…」
「ドラゴン?!」
 ユナさんが話を切り出したところに、またもやもやが割って入る!
「僕はグラン・ビルド火山っていう火山に住んでいたんだ! あそこに僕の体がある! もしかしたら異変に気づいてお母さんやお父さんが来てるかも!」


「グラン・ビルド火山ですって?」
 意外や意外、彼の話にユナさんが食いついた。
 少し得意そうな顔をする彼は妙に憎らしく見える。
 小突いてやりたいが残念ながら彼には触れない。


「そうだよ! 僕はそこに住んでたんだ!」
 彼の言葉に、ユナさんはむうんと考え込んだ。

もうひとつの幻想 56

 こうしてようやく私達は街へと帰ってきたのである。
 私達は港で何度も彼らに礼を言い、また会おう、と彼らと別れた。


 しかし思えば意外と短い冒険だった。
 今までは何日もかけて冒険をしてきたが、今日は長いようで短い冒険をした。
 


 けれど、疲れだけは一人前だ。
 街に帰ってきて安心した途端、どっと疲れが押し寄せてきた。
 暗い街は夜だという事を痛く実感させるもので、余計眠気を誘う。
 私達は何度も瞬きを繰り返しながら、ラムザへと帰りついた。
 


 ラムザはまだ明々と明かりがつき、中にはいくらか客の姿が見えたため、私たちは建物裏にある階段から2階に上った。
 私達はもう話す気力もなく無言で部屋に入る。
 私達の部屋は少し特殊で、ラムザ内では珍しく二人部屋である。
 これも私達が昔からラムザにいるためだ。


 部屋に入り、適当に床に荷物を置いて、汚れた服を着替えた。
 風呂に入るのは明日でいいだろう。
 私達は倒れ込むようにして布団に入ると、泥のように眠った。


 :


 次の日、何かゴソゴソと不気味な音がし、私は目覚めた。
 ハーブはまだすーすーと寝息をたてて眠っている。
 私は眠い目を擦り、むくりと起き上がった。
 昨日リザードマン2体と戦ったせいで、剣を持っていた右腕が痛いが、これはいつもの事だ。
 私はもう少し寝たいと思う自分を叱咤し、布団から出た。


 そして欠伸と伸びをし、ゆったりと室内を見渡すが、私はある一点を凝視した。
 それは部屋の入り口近くに投げるように置いたハーブの鞄である。
 リュックとは別の、ショルダーバックで、中には救急用品やお菓子などが入っている。
 それが今、もぞもぞと動いているのだ。


 私はそこで昨日の出来事をはっきり思い出した。
 霞がかかったようにぼんやりしていた頭が覚醒する。 
 あの鞄の中には、例のもやもやが入っている!
 私は一人でハーブの鞄を開ける勇気がなく、ハーブを起こす事にした。


 :


 ハーブを起こすのにだいぶ手間取り、しかも、ハーブは気持ち悪がってなかなか動こうとしないので、結局その鞄と向き合うのは、ラムザの共同浴場に入って、風呂と着替えをすまし、そして朝食を食べ、みんなに一通り話した後だった。
 みんなというのは、フロートやフローラ、クイットの事である。
 リクは今日仕事があるらしく、早いうちから出かけていったそうだ。


 そして私達の事を話すのと同時に、フロート達からハウリナちゃんとスカッシー達のその後の話も聞いた。
 ハウリナちゃんはひたすらユナさんに叱られた後、ユナさんも連れフロート達とハウリナちゃんは、海岸に戻ったらしい。
 するとハウリナちゃんが来るとそれまで静かだった海岸にスカッシー達が集まってきたのだとか。
 しかもハウリナちゃんはいつの間にかスカッシー達と意志疎通ができるようになっており、スカッシーはすっかりハウリナちゃんに懐いて、ハウリナちゃんが命じれば、すんなりと海へと帰っていったというのだ。


 にわかには信じがたい話だったが、みんなが口を揃えて言うので、嘘ではないのだろう。 
 そしてその現象を見て、ユナさんはいつにも増して研究に没頭しているという。
 ハウリナちゃんも迷惑をかけないなら、という事で、スカッシー達と会う事を許可されたらしい。
 スカッシー問題はめでたし、めでたし、という事だ。


 しかし、ハーブの鞄の中はめでたくない。
 すこぶる不気味だ。
 私は2階の私達の部屋から鞄をラムザの店内、要するに1階へ持っていき、みんなの前にそのもぞもぞする鞄を晒したのである。


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