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鬼畜と心配性とサポート役 第3章 13話

 客は全員伊家の周りにいるようで、席に着いている客らしき姿はない。


「当たり前って?一体何が配られてるんだ?」
 白はなにも知らない振りをして聞くが、袋の中身はきっと薬。


「ホント何も知らずに君はここに来たんだな。これは薬さ、麻薬みたいなね。相当ご機嫌なヤツ。俺は使ったことないけどね、ある筋で高く売れるからさ。」
「ご、ご機嫌・・・。」
「おうよ、君も麻薬くらい知ってるだろ?あれに副作用が付いたもんがこれだ。」


 麻薬、確かいつだったかどこかで習った気がするが、確か、幻覚見たり幻聴を聞くんだっけか?
 ほんの少しの間だけ、快楽に浸れるとかっていって、そんでもって中毒性が強くてなかなか抜けられなくなるっつー、と白は思い浮かべ、何でそんなものを好き好んで使うのか首をひねった。


「何だ?その不思議そうな顔。・・・そうか、君は幸せなんだな。幸せなやつにこれは用のないものだ。幸せじゃないやつが幸せに浸るために使うんだ、これは。」
 どこか悲しげな笑顔を浮かべ彼は言った。
 なんだろう、この人はなんだか回りの従業員たちとは違う、白はそんなことをぼんやりと思う。


「そういえば、副作用っていうのは?」
 ふとさっき男の言葉にあった副作用という部分が気にかかった。


「あぁ、それがこの薬の人気なところさ。ま、個人差はあるんだが、これを使ってると徐々に自分に芽生えた特殊能力が消えていくっていうんだ。」
「は?!」
「ん、まぁ、驚くのも無理はない。俺だって最初聞いたときは驚いたさ。それとこの薬を求める人の多さにもな。俺は違うがどうも自分の中の力と仲良くやってる人ってのは少ないようでな、大概のやつは自分の力を恨んでる。ここに来る客の連中もそうさ。大体は力のせいで男に捨てられ、その上政府に突き出されてこんなとこにつれてこられたってさ。ま、ドロドロしてんだ。身を引くなら今のうちだぜ。こんなこといつ見つかるかわかったもんじゃないんだから。」


「じゃ、じゃぁ何であんたはここにいる?」
「そりゃ、生活のためさ。ほかに仕事が見つからなかった、それだけ。」
「探せば仕事くらい・・・」
「そんな世の中甘くねぇのよ。まぁ君みたいな若い子にはわかんないかもしれないけど。とにかくここにいると君の身が危ない。」
 白はそれを聞いて決めた。


 この人は救おう、と。
 この人は他人のこともちゃんと考えてくれる、俺のことも邪魔な新入りとして扱ったりしない。
 そしてすべて話そう、そしてよければ協力してもらおうと考えた。


「あんたはこのままでいいのか?」
「・・・いいとは思っちゃいないさ。ただもう抜け出せないんだ。俺は知りすぎたから。」
「知りすぎた?」


「あぁ、あそこで薬ばら撒いてる・・・伊家っていうんだが、あいつの初めての取引現場を見ちまった。」
「初めての・・・取引現場?」
「そうだ、俺は運悪くヤツが薬売りに片足突っ込むところを目撃しちまったってワケ。それで、俺は裏で糸引いてる黒幕にうまく丸め込まれ、脅迫され、分け前は与えてやるからその代わり黙っておけ、話したら終わりだ、そう言われたのさ。」


「・・・じゃ、今俺に話したらまずいんじゃないのか?」
「いや、黒幕の正体さえ言わなければそれでいいとさ。俺は後生話すつもりはないぜ?このことは。」


「あ、あぁ、聞く気はないんだ。俺は自分でつかむから。」
「え?」
 今度は彼のほうが驚く番だった。


「俺はここに役の密売人をとっ捕まえに来た。おれ自身の疑いを晴らすために。それで、案の定ここでの取引を目撃した。もう黙っているつもりはない。」
「き・・・君・・・」
「でもあんたは助けたいと思う。あんたがいなけりゃ俺は情報を得られなかったろうし。ほかのやつらは何も話してくれなさそうだしな。」
 彼は黙りこくったまま何も言わなかった。


 彼の心情は白にはわからない。
 白の味方をしようという気になっているのか、それとも裏切り者として捕まえようと考えているのかは。


「おい!お前何勝手な真似してんだよ?!お前は薬もらって証拠見つけて帰ってくりゃいいんだよ!もうカメラに証拠はあるんだからそれでいい!さっさと戻って来い!」
 スピーカーから切羽詰ったような怒鳴り声が白の耳に届く。


「うるせぇ。」
「え?」
「は?」
 スピーカー、そして目の前の男も声を上げた。


 次の瞬間白は、スピーカーとマイクを取り外す。


「お・・・おい!死んでも外すなって・・・」
 最後帝の怒鳴り声が耳に届いたが、白は返事を返さない。


「それで、あんたにも一役買ってもらいたい。」
 白は驚く男の前で機械を外し、床に落として踏みつけると、言った。


「あんたは薬を捨てろ。証拠もすべて消せるものは消すんだ。そんで伊家を・・・そうだな、屋上にでも呼び出してくれ。それであんたはここに逃げろ。事情を話せばわかってくれる。」
 白は言いたいことだけ言うと、スーツのポケットから一枚の紙切れを取り出した。
 それはとある店のチラシ。
 レストラン「でりしゃす」と書かれており、もちろん地図も載っていた。


「レ、レストラン・・・?本当に・・・大丈夫なのか?というより俺の生活は大丈夫なのか?保証は・・・ないか。まぁ足を洗えるわずかな可能性にかけようか。」
 彼はこの状況でも笑顔を浮かべ、チラシを受け取るとちょっと待っていて、と席を立った。


 彼の足はだんだん人の波が引いてきた伊家の元へ向かっている。
 そして伊家とにこやかに何か会話を交わし始めた。
 しばらくすると伊家は白に向かって意味深な笑顔を一瞬向け、その場を去る。


 その後男は伊家を見送ると白の元へと帰ってきた。
「話をつけた。案外簡単に応じてくれたよ。これで君の望みどおり、伊家君は屋上で待っていることとなった・・・。それで俺は足を洗うべく逃げ出す・・・と。このレストランに向かってな。心残りは黒幕さんのことだ。もしかしたら君がレストランに付く道中で俺はぽっくり逝ってるかもしれないから、ことの後も気を抜かないようにな。」
 と、彼は力のない笑顔を残し、こっそりと近くにあったゴミ箱に手に持った紙袋を捨てると、ふらりと店を出て行った。


 白はというと大きく伸びをし、伊家の消えて行った方へと向かう。
 そんな白に向かって、満足げな客の声や、従業員たちの怪訝そうな目線が突き刺さった。
 だが、白が伊家に薬を売ってもらう交渉しに行くとでも思っているのか、白に話しかけるものはいない。

 白は店の奥へと姿を消した。

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