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高校生が描く、オリジナルのファンタジー小説を連載しています。
リリスに見送られ俺はゆっくりとねこボンの背後へ近づいた。
ブラストはまだ何か言いたそうな顔をしていたものの、もう諦めたようで、黙って俺の合図を待っている。
ゆっくりと近づく俺だが、茂みの葉が揺れてこすれる音は思ったより響き、あまり近寄れない。
俺はある程度近づくと、これ以上は気づかれないように近づくのは難しいので、ブラストに合図を送った。
ねこボンから少し間が開いているがこれだけの距離なら走ればすぐにねこボンの元へと行けるはずだ。
そして、合図を受けたブラストがねこボンへとできる限り普通に歩いて近寄っていく。
盛大にがさがさという音をたて、できるだけリーダーらしい威厳を保ちつつ、ブラストは近づく。
心なしかブラストの顔が赤い。
まぁ、恥ずかしい見た目もあるし、リリスの視線というプレッシャーもあって緊張してるだろうからな。
アイルなんかもうにやけた顔でずっと固まってたし。
あんな顔されたらだいぶ屈辱的だろうな、ブラストって意外とプライド高いから。
俺がそんなことを考えている間にねこボンがブラストに気づき、さっと横を向く。
俺はもう一度少し移動して、ねこボンの背後へと回った。
「にゃっ! にゃにょ?」
ねこボンは驚いたような声を上げ、ブラストをつま先から猫耳の先まで眺めた。
そして、ブラストは咳払いを一回すると意を決したように「お、俺がねこボンのリーダーだ!」と大声で、なおかつはっきりと言った。
ねこボンとブラストの間を一陣の風が通り過ぎ、奇妙な沈黙が続く。
が、少し離れた茂みからリリスの猛烈な指示が飛んでいるのに気づき、俺はようやく今が捕まえるチャンスだということ気づいた。
俺はダッシュで駆け出し、ねこボンのふさふさした体に手を伸ばした。
そして、ねこボンに指先が触れたか触れないかのところで、そのふわふわしたものは消える。
「え?!」
俺は状況が飲み込めない。
ブラストも唖然とした表情で俺を見下ろしたまま。
そして、俺は地面へ滑り込む。
地面が思ったより柔らかく、怪我はなかったが、服は泥だらけだ。
俺は口に入った泥を吐き出しながら何とか立ち上がり泥をはたいた。
そして、ため息をつこうとしたその時「にゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」というすばらしく大きな叫び声とともに、何かが猛烈な勢いで俺の顔面に飛んできた。
そして、そいつの足が俺の顔にクリーンヒット!
思わず俺は尻餅をついた。
「ふにゃぁ、ふみゃ、うにゃぁ、にゃーご、ぐるるるる」
そして、俺の目の前に優雅に着地したのはさっきのねこボン。
何か怒ったように喋っては唸る。
いったいこいつは何を話しているんだろう。
そうやってしばらく何やら俺に向かって言うと、今度はブラストの方を振り返りぺこぺこと頭を下げた。
「ふみゃぁ、ふにゃぁ、にゃにゃ、にゃー」
一生懸命何やら長々と喋っているが、ついにブラストが我慢できなくなり「ごめん。何言ってんのかさっぱりわかんね」と告げた。
その猫はというと何やらショックを受けたようにあんぐりと口を開き、何度も目を瞬いた。
そして、ちょっと待ってというようにブラストに手の平を突き出すと、ねこボンは喉元を触る。
するとふさふさと毛の生えた首元から赤いものが覗いた。
それは、首輪のように見える。
そして、チリンという澄んだ鈴の音がしたと思えば、小さな爆発音が響き、ねこボンが白い煙に包まれた。
俺とブラストは突然上がった煙に咳き込みながらも、煙を払おうと努力した。
俺は尻餅つきっぱなしというのもな、と思い視界が悪い中立ち上がる。
「一体何が起きたんだよ!ブラスト無事か?」
「あ、あぁ、なんとか」
すぐ近くからブラストの返事が返ってきた。
しばらく経つとだんだん煙も消え、俺の目の前に人影が現れる。
一瞬ブラストかと思ったが、ブラストに比べるとずいぶん背が低い。
「お前、誰だ!」
人影に向かっていうと、煙の中の人影がずんずんと近づいてきた。
「お前こそ誰だ!」
そう言ってきた人影の姿がついにあらわになる。
彼はさっきのねこボンの模様を模した服を着、鈴のついた赤い首輪をつけ、そして、青い腰巻を身につけていた。
髪は短く真っ黒で少しうねっている。
髪の間からは特徴的な猫耳が覗いていた。
:
俺達はねこボンの姿だった少年の周りに全員集合した。
首輪をつけているということは既に飼い主がいるということであったので、リリスはもう元の調子に戻っている。
まぁ、少し残念そうではあったけどな。
そして、当のねこボン(?)はというと、あなたがリーダー? なんてぶつぶつ言いながらブラストを眺め回している。
「ね、ねぇ、君は一体何者なの?」
そんなねこボン少年にアイルが聞いた。
アイルは嬉しそうな表情と、不安そうな表情の混ざった変な顔をしている。
「あ、自己紹介がまだでしたね。僕は「ジル」といいます。あなた方は?」