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Another fantasy ?1?

 僕はフリーターである。
 要するに無職だ。
 こんな状況に陥って早一週間。
 
 
 心の傷は一週間もあればぼちぼちと回復はしたが、いまだにあのときのことを思い出すと身がすくむ。
 そしてどうして僕がここにいられるのか疑問にも思う。
 
 
 まぁ、それもこれも僕の恐ろしいほどの運のよさのせいだろう。
 でもどうせ運がいいなら自分の体だけじゃなく、心のことも考えてほしい。
 僕のハートはおかげさまで傷だらけだ。
 

 ガラスのハートにあの状況はきついものがあった。
 でもまぁ、そろそろこのハートも修復が大方完了した。
 

 そろそろ僕を雇ってくれる人が現れてもいい頃合じゃないか?
 腕はそれなり、そしていろんな意味でバランス型の僕だ。
 まぁ、バランスを保つために服装は少し妙だが、それでも腕は悪くないんだ。
 強いわけではないけれど。
 

 僕は床に座り込み壁にもたれかかったままカウンターを見た。
 そこにはここのご主人、リゼロスさんが暇そうに頬杖をつきぼんやりと入り口のドアのほうを見ているのが見える。
 

 ここ最近の不況と平和のおかげでこの兵士斡旋所は閑古鳥が鳴きっぱなし。
 閑古鳥はさぞ喉が痛いことだろう。
 代わりといってなんだが僕はこないだの面接会場でもらってきたのど飴を口に放り込んだ。
 

 もちろん僕はそこの面接で落ちた。
 だからここで居候のままぼんやりと引きこもりのような生活をしているわけだ。
 

 だいぶ前にもらったあめだから少し溶けてべとべとする。
 でも効果は覿面、口の中は歯磨きしたときみたいにスースーし始めた。
 う、ちょっとこれは強いな、のどが痛いわけでもないのに、のど飴なんて食べるもんじゃないかもしれない。
 そんなことを思いながらのど飴と格闘していた、そんなときだった。
 

 不意に扉が開くベルの音が。
 カウンターでうとうとしていたリゼロスさんがはっと顔を上げ、目をしばたたかせた。


「ここ今開いているよね?」
「あぁ、はい。」
 入ってきた若い男をまじまじと見つめながらリゼロスさんはうなずいた。


 その男、背はあまり高くない、標準的な体型といったところだろうか。
 黒いアーマーと白いマント、白いブーツ、腰には剣を差している。
 その剣の柄には繊細な彫刻が施され、色とりどりの宝石がちりばめられていた。
 きっと彼は騎士か、そこから派生する職種の人だろう。
 彼は短い金髪で、阿保毛というのだろうか毛がひとふさ跳ねている。


「今急ぎで仲間が必要なんだ。」
 彼は言った。
 つまり彼は雇い主を探しに来たわけでなく、雇いにきたというわけだ。


 リゼロスさんが少しうれしそうな顔をする。
 リゼロスさんはなかなか表情を表に出さない人だけど、さすがに今のご時勢なかなか新たに戦士を雇おうという人も少ないし、当然の反応だ。


「どのような人をお探しで?」
 リゼロスさんはカウンターの周りを散らかり放題埋め尽くす書類や本などの山の中からファイルを一冊取り出した。
 そこには確か、今雇い主を探す人たちの簡単な情報と写真がまとめられている。
 今は僕みたいな雇い主待ちの人が多いからファイルの分厚さは尋常じゃない。
 周りに散らばる書類たちも昔はこんなに多くなかったのに、最近は職にあぶれてこの戦士斡旋所に来る人たちが急激に増えたから、様々な人のデータが多すぎてまとまらないようだ。


「いや、別にどんな人でもかまわない。ただ、いくつか冒険を経験していて、それなりに戦える人であれば。」
 リゼロスさんの質問に男が言った条件はたったそれだけだった。
 最近はいろいろと注文をつける人が多くなかなかぴったりの人が見つからないというのに、そんな条件ならほぼ全員当てはまるじゃないか。
 って、これは僕も当てはまるぞ。


「はぁ・・・誰でもいいと・・・。」
 リゼロスさんはファイルを閉じたまま困ったような顔になった。
 まぁそれはそうだろう、候補が多すぎる。


「あ、でも急ぎだから、そうだな・・・。じゃぁ、今この建物内にいる人全員雇おう。」
 リゼロスさんは男の言葉にあんぐりと口をあけた。
 そしてすぐ苦虫を噛み潰したような表情になる。


 まぁそれも無理はない。
 普段はこの斡旋所には何人も雇い主待ちの戦士たちが待機しているが今はほとんど全員職探しの真っ最中。
 ここでずっと雇い主を何もせず待っていたりなんかしたら生活できなくなってしまう。
 だからみんな雇い主を待ちつつ、今日もどこかで働いているというわけだ。


 ま、僕は貯金があったし、ここで世話になっているし(もちろんお金は払っている!)、ガラスのハートの修復作業で忙しかったからずっとここにいて、ぼんやりリゼロスさんの顔を眺めたりとかしていたのだけど。
 ・・・で、何が言いたいかというと今この斡旋所には僕しかいないのだ。


 そしてリゼロスさんは軽くうつむき表情を隠すと、僕の方を指差した。
 男が僕を見る。
 僕はあわてて立ち上がり姿勢を正した。


 彼は僕を頭の先からつま先まで眺める。
 あ、僕そういえば妙な服装してたなぁ、といまさらながらに思い出した。


 僕は黒くすその長いローブの上に、フードつきの白いローブ、そしてその上に皮製の簡単なアーマーをつけ、その上にはさらにブレストプレート(胸を覆う部分的な鎧)をつけるというすばらしく個性的なファッションを展開していた。
 リゼロスさんが苦々しい顔をしながら僕を見る。
 だが男は表情一つ変えなかった。


「他には?」
 ・・・僕に対してのコメントはないのか!
 う・・・これはどうなんだろう?
 僕は見なかったことにされたのか?
 OKなのかNOTHINGなのかはっきりしてほしい。
 ノーコメントほどつらいものはないと今実感した。


「こいつだけだ。」
 そう言ったリゼロスさんはもう終わりだといわんばかりに片手で目を覆っている。
 待って、リゼロスさん!!
 まだ可能性はゼロじゃない!
 ただ・・・ノーコメントなだけさ!


「そうか・・・。」
 男はそこで考え込むように黙ってしまった。
 気まずい沈黙が続く。
 こういう時時間って妙に長く感じる。


 そして
「仕方ない、雇おう。」
 僕とリゼロスさんはそろって目をしばたたかせた。
 仕方ないけど雇ってくれるって!!仕方ないけど!


 リゼロスさんは見る間に笑顔になると、お金を入れるトレーを引っ張り出した。
「紹介料2000リルです。」
「少し高くないか?」
 男がすかさず言った。


 確かに普段の紹介料は1500リルだ。
 が、そこは100戦練磨、超ベテランのリゼロスさん。
 表情は笑顔のまま何も言わない。
 ただ、理由はわかっているだろう?と目が訴えていた。


「不況、か。」
 男は軽く息をつくと財布を取り出し、ぴったり2000リル支払った。
「はい、毎度。」
 リゼロスさんはお札をチェックした後、カウンター下にしまいこむ。


「ケイ。」
「は、はい!」
 そして不意に僕はリゼロスさんに呼ばれ、思わず気をつけの姿勢をとった。


「今の様子全部見てたな?」
 僕はこっくりとうなずく。
「というわけで、お前は今この人に雇われた。お前は雇ってくれるなら誰でもいいと言っていたから彼の名前も素性も一切聞かなかった。それでもいいな?」
 僕はぎこちなくだが再びうなずいた。


 そういえばこの男は何を仕事をしているのか、僕を雇って何をさせるのか、詳しい話を一切聞いていない。
 こ、今度からはきちんと詳細を聞いて、雇ってもらうかどうか決めてから紹介してくれと伝えよう。
 まぁ今度があればの話だけど。


「それじゃ、ケイ。しばらくお別れだ。たまには帰ってこいよ?」
「はい!」
 僕は大きな黒いマントを羽織り、荷物の入ったリュックを引っつかむとリゼロスさんに深々と頭を下げた。


「そんじゃ気をつけてな。・・・コイツをよろしくお願いします。」
 リゼロスさんたらまるで僕の父親みたいだ。
 まぁ確かに年はそれくらい離れてるけどさ。


「それじゃ、行こうか。」
 そう男は笑いかけると店を出て行く。
 僕はもう一度リゼロスさんに頭を下げると、長く世話になった斡旋所を出た。

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