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高校生が描く、オリジナルのファンタジー小説を連載しています。
「きっと一度に多量の魔力をつかっちゃったんだね。まぁ、魔法がない世界から来たといっていたし、その辺の力加減ができないのも仕方ないことかな」
リリスがアイルの顔を覗き込みながら言った。
その頃ブランはリリスの魔法と、アイテムポッドにいつも入れているらしい薬のおかげですっかり元気を取り戻している。
服がぼろぼろになって汚れているのは少し痛々しいけど、体は大丈夫そうだ。
「きっとすぐに目を覚ますよ。この部屋は扉にあった魔石のおかげで、魔力が多いから」というわけで俺はアイルをおぶった。
一体が爆発、一体はレイさんの魔法により身動きが取れなくなって、最後の一体は氷付け。
とりあえず敵の動きを止めた今、先に進む扉の様子を見てみることにした。
その扉は、この部屋に入ってきたときに通った扉よりも大きく、その分使われている魔石の数も多い。
俺はアイルを近くの壁にもたれさせて、扉と、その前に立つブラストを見つめた。
「じゃぁ、押してみるぞ」
ブラストが言い、扉に手をかけた。
さっきの扉もこの扉も取っ手はついておらず、押すしかないようで、ブラストはぐっと扉を押す。
「……開かない」
少しいらいらとした口調でブラストが呟いた。
「おや? これは?」
そんな時いつの間にか虫眼鏡片手に扉を点検していたブランが言った。
ブランが指差す先には一際大きな魔石が3つ。
その位置は俺がしゃがんだ時の目線の高さくらい。
きっとねこボンの背丈に合わせてあるんだろうな。
そして、その3つ並んだ石は左側の石だけが光っている。
「ふぅむ……どうやら扉を開けるにはゴーレムの動きを止めるだけでなく、きちんと破壊しなくてはいけないようですねぇ……」
ブランがあごに手をやり呟く。
確かに今きちんと倒したのは最初左側に出現したゴーレムだけだ。
きっと全部のゴーレムを倒し、3つの魔石に光をともすことで、扉が開くという仕組みなんだろう。
なるほど、これは本格的な仕掛けだ!
ねこボンお手製ダンジョンだって舐めてらんねぇな!
「それじゃぁ、あいつらをどうにかしないといけないわけだな」
振り返れば氷付けになったものと、黒いもやのようなもので姿形が見えないほどがんじがらめに縛られたゴーレムの姿。
「あの……」
そこで珍しくレイさんが口を開いた。
一斉に注目するとレイさんは、少しもじもじしながら話し始めた。
「えっと……この……ゴーレムは……魔石を……原動力に……動いてる……。魔石は……全部で……3つ……。顔に……2つと……体の……中央に……1つ」
レイさんはぼそぼそと言うと、恥ずかしそうに少し顔を伏せた。
「なんでそんなことを? どうやって調べたんですか?」
ブランが興味津々といった顔でレイさんに聞くと、どうやらレイさんは魔法でゴーレムを縛ったあと、また別の魔法で、ゴーレムの中身を調査したらしいことが分かった。
なるほど、アイルが戦おうとしている時もまだ何かやっていたのは、ゴーレムを調べるためだったのか。
「そんじゃそれを破壊すれば、ゴーレムは倒せるってわけだ」
俺が言うとレイさんはこくりと頷く。
「よし! ならいっちょ……」
「何をするんだ?」
いっちょやるか! と俺が言おうとしたのを見越してブラストが冷たく言った。
「う」
そういえばゴーレムの弱点は分かったけれど、どうやってそこをつくのか考えてない。
「そうだ、ゴーレムの弱点って確か爆発でしょ? あの、フレアパーンチ! でいいんじゃない?」
リリスがぽんと手を打った。
なるほど、その手があった!
村にいた頃は危険だからって禁じられてたせいもあってすっかり忘れてた。
そういえば、レイさんとフェザーに出会った時も使ったな。
あのぴちぴちゾンビ……確かスピアって名前だったな。
あいつをふっ飛ばしたんだっけ。
「よし! それじゃぁフレアパンチでいこう!!」
今度こそ駆け出そうとした俺だったが、「待て、フレア」またがしりとブラストに腕を掴まれた。
これこのダンジョンに入って何回目だ?
何回俺の足を止めるんだよぅ、ブラストさんよぉ……。