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鬼畜と心配性とサポート役 第4章 2話

「やれやれ。」


 「でりしゃす」へと向かう商店街の大通り、零斗は大きくため息を吐いた。
 メールでいきなり「でりしゃす」へと召集が掛けられ、已む無く、生徒会3人で行く事になったが、帝はもとより、零斗すら行きたがらない。

 黒はそんな彼らの背中を見ながら、つられて出そうになったため息を飲み込んだ。

 しゃっくりが出そうだ。
 


 3人の共通したこの気持ちには、とある原因がある。

 前日解決した麻薬事件、裏で糸を引いていた人物に操られていた少年、伊家 照輝が居候しているのだ。
 正直、3人が苦手とする人格でもある。
 


 帝が半眼のまま呟いた。
「会いたくねぇ。」
「同じだ。」
「同感よ。」
 


 その会話の余韻が切れる前に、突然電子音が鳴る。

 零斗がポケットに入れていたパソコンを取り出し、画面を開いた。
 更に渋面が酷くなった。


「…おい、生徒会室からの呼び出し。」
「生徒会長は俺の目の前にいると思うんだが、幻覚か?」
 帝はその画面を覗き込む。

送信者:紅謳 羅威
内容 :生徒会室にてこのメールを送る。校長からの依頼が入っている。3人の内誰かが戻って来い。

 3人で顔を見合わせる。


 誰か、と指示されたというのに全員戻ってきた。

 黒が生徒会室のドアを開けたとき、2名の人物がソファに並んで座っている。

 正確には、2名と1つ。
 


 一人は、灰色の髪のどこにいてもおかしくない学生、速瀬 早也。

 顔も平凡、身長も平凡、頭脳も平凡。

 ついた仇名は「平 凡太」。

 能力は、人間では考えられない速さで走れることだったはず。
 


 そしてもう一人は、長身の青年。

 赤い瞳をサングラスで隠し、着ているのは蜘蛛の巣模様の白い服。

 謎の人物、紅謳 羅威。

 その手には、何故かWiiリモコンが握られていた。
 


 零斗が思わず聞く。
「何ですかそのWiiリモコン。」
「ただのWiiリモコンだ。」
「マジですか。」
「いいから座れ。」
 平坦で静かな指示。

 


 仕方なく3人は机を挟んで向かいのソファに座るが、早也は視線があっちこっちへと移動し、さらに居心地悪そうに肩を揺らしていた。

 その横には、まだ誰かが一人くらい座れそうだ。


「…まだ、誰かが?」
 思わず本性を隠して帝が聞く。

 紅謳はその長い睫毛を伏せて頷いた。
 


 そういえば、ついこの間まで紅謳 羅威は大怪我を負って入院していたはずだ。

 零斗がそう話していたのを、帝は一言一句記憶している。
 それはまた、黒も同じだった。


「紅謳さん、入院していたと聞きましたが?」
「大事ではない。足の健が切れ、腹部から内臓が出ただけだ。」
 十分大事に聞こえるが、俺の気のせいなのか。―――零斗は思ったが言わなかった。
 どんなことになったらそうなるのだろうか。―――黒は思ったが言わなかった。
 足の健が切れても内臓は出ないと思うが。―――帝は思ったが言わなかった。


「失礼するぜ!」
 乱暴にドアが開放された。

 蹴られたのだと、入ってきた人物の格好で分かる。

 片足を半ばまで上げていたのだから。


 逞しく男らしい胸板を出した、染み1つない白いスーツ。

 顔立ちは整っているが、頬に刻まれた刺青と、その耳のシルヴァーピアス、さらに高い身長と目つきの悪さから、彼を不良と見るものは多いだろう。
 


 しかし彼は、自分のことを不良とは言わせない。

 自らを極道と名乗る問題児、白 獅凰。

 入学当時、生徒会とはひと悶着があり、いまだに因縁は続いたままだ。


「よお、猫かぶり副会長。テメェのサブネーム、いっそ団長に改名したほうが良くねぇ?」
「よお、崩れヤクザ。相変わらずその頭の阿呆具合は直ってないのか。治療が必要かな?」
「言ってくれるじゃねぇか、エセ眼鏡。」
「言ってくれるじゃねぇか、エセ不良。」
 会話から分かるように、特に白と帝の仲は頗る悪い。


 その間にも、紅謳は机の上にWiiリモコンの台座を置き、手元のそれを立てる。

 やっぱり何かの装置なのだろうか。
「何ですかそれ。Wiiリモコンを模した何かですか?」
「だから違う。Wiiリモコンだと言っているだろう。」


 うるせぇ、と意思表示したのは、乱暴にソファに腰掛けた白。

 肩幅が張った紅謳と彼、2人に挟まれ、早也が可哀想なまでに縮こまった。
 大変、居心地が悪い。


『そろったそろった。それじゃ、会議を始めようか。』
 そこで、唐突に静寂を破った声。

 ザリザリと耳に障る高音と低音の複製音、そして雑音。

 その中に混じって、言葉として認識できるものが、1つ。
 


 唾を飲み込んだ零斗が、盛大に噎せた。
 Wiiリモコンが、喋っていた。

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