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鬼畜と心配性とサポート役 第4章 6話

「だからぁ、説明しているだろ。」
 猫、もとい伊家は、とても気軽に帝と話していた。

 まるでことの重大さを分かっていないかのように。


「目が覚めたら猫になったなんて話、誰が信じると思ってんだこの野郎。」
「いや、逆にあの事件が原因なら納得できるな。寧ろそれで納得したい。」
 零斗は痛むこめかみを押さえた。
 伊家の話はこうだ。


 

 ―――この店に匿われてから、職を失った同僚達のリーダーシップを取っている伊家は、その人懐っこさから接客業に向いていた。
 ある日、岩陰 竜海から「顔色が悪い」と指摘される。

 徐々に仲間達から受けるその忠告が日増しに多くなった。
 そしてある朝、目が覚めたら猫だった。


「途中経過を省いていないか?」
「省くもんか。これが白日の下の事実さ。」
 猫らしくない可愛げの無さ。

 ちなみに本人曰く、この状態だと素っ裸らしいが、猫なので他人も本人も気にしない。

 おそらく黒も気にしないだろう。


「猫を集めていたのは、お前か。」
 零斗は顔を顰める。
 根も葉もない噂の中で、何故か大量に猫が発生しているというものがあった。

 伊家は軽く頷く。
「集めていたというより、歌ってたら集まってた、が近いかな。」
 伊家は音楽が好きだ。
「近所迷惑だ。止めろ。」
「えー。」
 何が迷惑なのか分かっていない声で忠告され、気の抜けた返事

 喋る…いや、歌う猫なんていたら、それはもう近所迷惑ではない。都市伝説だ。


「どうやったら喋れる?」零斗は聞いた。

 猫には声帯がない。
「えっと、これって一応精神呼応みたいなので話しているからさ。」
「テレパシスか。」
「若干それに近いかな? この姿は能力使えないけど、ある程度は脳が反応してくれるみたい。喋りたいって。…でも俺の能力、女性専門のはずなのになぁ…。」
 零斗は竜海へと振り返る。


「とにかく、何かあの店用の対策は打ってあるんだろ?」
「従業員達が殴りこみに行きたがって血の気が湧いてるぞ。」
「却下だ。俺たちは町内のために働いているんだ。テロをするつもりで働いているんじゃない。」
 帝が多少残念そうな顔をする。

 この際なので無視した。


「何がある?」
「ビラ配りと…ポスターかな。」
「ビラは配ったのか?」
「まだだ。」
「はよ配れ!」
 零斗の怒鳴り声に、気だるげな顔をしていた従業員達が引っ叩かれたような顔をして立ち上がり、慌ててチラシを保管している棚へと駆け寄った。

 伊家はとりあえず満足げに彼らを眺め、いってらっしゃいと猫の手を振る。


「君ら顔はいいから、大丈夫だよ。」
 従業員は元ホストだ。

 顔が良くなくては出来ない職業でもあったのだろう。

 彼らは言葉を交わしながら、手元のチラシを数えてそれぞれ外へと出てゆく。

 接客態度がよければ、大抵の学生は受け取ってくれるはずだ。


「白も呼べばよかったな。」
 零斗がぼそりと言葉にすると、帝はへ、と笑った。

 優等生らしくない笑い方だった。


「アイツは無理だろ。大抵の女子が苦手の範囲に入っているからな。」
 そう、白は女子が苦手だ。

 その攻撃的な性格と顔立ちのよさで、同級生及び上級生の女子からは高評価を貰っている。

 しかし、何か精神的外傷でもあるのか、その年頃にしては珍しく、女子との関わりを持とうとしない。
 


 例外は、黒。

 白が彼女だけは『女』と認識していないのだ。
「黒はライバル視されているだけだろ。」
「零斗、お前が調べればいい。」
「謹んで辞退する。」


 帝が伊家猫の首根っこを引っ掴み、椅子から持ち上げる。
「とにかく、生徒会室に一度戻るぞ。おっさん、何かあったら連絡くれ。」
「ほいほい。今度は珈琲飲みに来いよ。」
 竜海がカウンター向こうから手を振った。

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