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鬼畜と心配性とサポート役 第4章 8話

「まいったなぁ。あのバカボン君が出てきたよ。」
 暗い部屋。

 壁一面に張られたモニター画面。

 そこには常にこの島のいたるところが映し出されるというのに、今日はとある場所しか映していない。
 


 広大な緑の森。

 すでに夜も暮れ、肉眼で見ればどこに何があるのかさえ分からないはず。

 だがモニター画面は緑色で構成され、動くものの輪郭を白い線で捉えている。

 正面の壁、3×3に張り付けられた画面、その中央の左端には、3人分の白い輪郭。

 右端には小さな少女の白い輪郭。
 その中央は、画面が暗いままだ。

 そこだけ光を発することはなく、椅子に座ってそれらを眺める人物は溜め息を深く吐いた。


「やれやれ、ちょっとしか動けないのに…。」
 そして、彼はポケットから携帯電話を取り出す。

 登録してある電話番号を親指で押し、耳に当てた。


「あー、紅謳くん? ちょっと頼みたい事があるんだ。…うん? ああ、なんだ彼もいるの? そりゃちょうどいい。」
 人格を全て隠して、彼の声は常に明るい。
「奴らが動いているんだ。陽くんにも連絡を取って、助力をして。…うん。頼んだよ。」
 そして通話を切る。


 彼の口元が、凶暴に上へと歪んだ。

                               :



「…ん?」
 机の上で眠っていた伊家猫が、急に目を覚ました。

 辺りをきょろきょろと見回し、それから帝へと振り向く。

 文庫本を読んでいた帝が、その群青の瞳を上げた。

「どうした?」
「なんか、変だね。」
「俺の顔は普通だ。」
「普通じゃなくて美形だよ。そうじゃなくて、ほら、空気。」
 零斗が耳を澄ますが、特に何も感じない。

 だが帝は、何かに警戒するかのように眉を顰め、それから天井を見上げた。

「おい伊家。」
「何?」
「どこからだと思う。この変な音。」
 音? ―――零斗は首を傾げる。
 帝には一体何が聞こえているのだろうか。

 彼は伊家猫へと視線を注ぎ、それに伊家猫は迷わず答えた。

「多分東。―――未開発の森辺り。」
「また面倒事か。……仕方ねぇな。」
 帝は文庫本に栞を挟み、机に置いてソファから立ち上がる。

 零斗も慌てて立ち上がり、彼の先を伊家猫が歩く。

 尻尾がしなやかに動き、それから廊下へと走り去っていった。

「今日は学校に泊り込みになるところだったな。」
 帝は暗い廊下を歩く。

 普通なら人間ではない何かに怯えるような校舎の暗がりだが、彼は何よりも生きている人間が怖いことを知っている。

 憎悪して迫害をするのも、迫害をされて憎悪するのも人間なのだ。

「行くぞ零斗。多分、黒が危ない。」
 帝が指を鳴らす。

 彼の背後の空間が淡く光り、潰れるようにして曲がって渦を巻く。

 そこに伊家猫が飛び込み、慌てて零斗も飛び込む。

 そして最後に帝が慣れた所作で入り込んだ。
 空間は一瞬光に包まれ、そして歪みが消え去る。

 その直後、別の暗がりから人影が浮かび上がった。

 顔には影が差してよく見えない。

 紺色のロングコートを纏ったその人影は、帝たちが消えた空間をじっと見つめ、それからまた暗闇の中へと戻っていった。
 

 そうして廊下には誰もいない。

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