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鬼畜と心配性とサポート役 第4章 17話

 二人が同時に地面を蹴る。

 僅か一秒の間に縮まる距離。

 渦巻く風と雷が、その牙を互いに向け、衝突する―――――直前。


「あのね、ちょっとは神経とか使いなよ。バカボン集団。」


 間近に聞こえた声は、呆れるほど乾いた音を立てて、両者の能力が込められた掌に何かが当たる。

 指の間に細い指を絡めたそれが、骨ばった肉の薄い掌だと、一瞬の内で気付いただろうか?
 


 骨と皮が軋むような音を立てて掌を防ぎ、帝と青年の間に割って静かに立っている人物は、まるで石膏で作られた彫像のように白い人だった。
 白い半袖のシャツ、そして白いズボン。

 むき出しの腕、髪の毛、靴を履いていない裸足は、抜けるように白い。

 死体の、白。
 不自然な影が顔面に入っており、帝には横顔すら見えない。ただ先ほどの声がこの人物のものだとすれば、おそらく20代後半頃。
 


 帝の力を押し返すほどの人間が、零斗の他にいたのか。
 いや、違う。
 ――――これは、『何』だ?
 


 白い人は手首を軽く回転させただけで、青年と帝を地面から離し、隙だらけの背中から叩きつける。

 何とか受身を取り、手を振り払って立ち上がった。
 白い人物は、こちらに背を向けていた。

 一部だけ伸ばし、民族的だが小さな装飾品をつけた長い白髪が、風に揺れる。


「帝クン。」
 どこかで聞いた事があるような呼び方。
「…?」
「ちょっと帰ってくんない? ―――会長のところまでは送るから。」
「は……なぁっ!?」
 文句を言おうとした帝の足元に、突如として黒い渦が生まれる。

 そこから伸びた包帯状のものが、あっという間に帝の目元と口、両手足に絡まって渦へと引きずり込んだ。
 


 閉じた闇の口を見ながら、青年がまたもや楽天的なまでに笑う。
「ちょっと酷いんじゃないのぉ? そのやり方。」
「さあ? ぼくは人としての観点をほぼ失くしているから、分からないよ。」
 白い人は相変わらず直立し、そこから動こうとしない。

 だが、そのむき出しの両腕に刻まれているのは、夥しい量の、緻密でどこか美麗な刺青だ。
 それが、ぼんやりと光り出す。

 指先から走った光の線が、刺青をなぞってシャツの袖口から中へと消えた。
 


 青年の笑顔は消えない。

 ただし、先ほどまで帝に向けていた不敵なものとは違い、どこか緊張が宿っている。


「…死に損ないの爺がここまで来るなんて……あの子達も、随分と目を掛けられているんじゃない?」
「失せるがいい。」
 清明に白い人から紡がれたのは、そんな言葉だった。


「勝てると自惚れているのなら、大きな過ちだね。その身とこの魂では、経た年月さえ違う。伊達に長く生きているわけではないんだよ。CHAPPU5963の解毒薬を寄越してさっさと失せろ。」
「…やれやれ、爺は口煩いねぇ。」
 青年はうんざりとしたように呟き、その白い服のポケットを探る。

 そこから出したのは、コルク栓で蓋をした試験管に満たされた、透明な液体。

 それを、青年は白い人へと投げ渡す。
 危なげなく、骨ばった指はそれを受け取った。

 確認するように月に翳された試験管が、光を反射して刹那に鋭く光る。


「今日はここで退くけど、将来有望な株は全部潰して行くからねぇ? お楽しみに。」
 くつくつと笑いながら、まるで霧となるように青年の体が消える。
 空中に霧散したその残滓を見送り、白い人は夜空を見上げた。


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