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鬼畜と心配性とサポート役 第4章 26話

「凡太。」
「はい?」
「コルク栓、とってこい。」
 


 またしても。
 仕方無しに早也はコルク栓を拾い上げ、帝に渡す。

 ふと表情を伺い見て、早也は堪らず凍った。


「あ……の………?」
 あの大魔王の顔が、瞠目したまま凍っている。
 大魔王こと帝は、受け取ったコルク栓を試験管に、厳重に押し込んだ。


「…帝、どうかしたのか?」
 零斗が心配そうに聞き、帝は嫌そうな顔をして試験管の栓を抜いた。
「…ほら。」
 腕を精一杯伸ばした帝。

 その先の試験管に零斗が鼻を近付け――――後ろに倒れる。


 「「「え?!」」」全員が呆気に取られ、紅謳が両目を穏やかに閉じた。

 まるで、最初からその光景を予想していた、と言わんばかりに。
「…校長から厳重に保管するように言われていた『O?KA4』を、凍静教師が遊び心半分で嗅いだ。…今の生徒会長と同じような反応を示した。」
「凍静先生も倒れたんですか!?」
 じゃあ倒れなかった帝は何なのだろうか、とはさすがに誰も言わなかった。

 あと、遊び心半分で薬物を嗅ぐのもどうかと思ったが、同じように言わない。


「おい零斗、大丈夫か。」
 内心防護マスク、いやガスマスクが欲しい帝が、コルク栓を指で弄びながら問う。
「…うー………。」
 呻き声を上げながら、零斗は床に倒れたままうわ言のように呟く。
「………しばらく砂糖を使ったモンは食いたくねぇ……。『さとう』って文字を見ただけで吐きそうだ………。いや…思っただけで……。」
「お前の気分がよく分かる実況をありがとう。…俺も同じ気分だ。」


 帝はコルク栓を再び厳重に閉め、厳しい顔で陽に突き出す。

 彼の鞄に伊家が入っているからだ。
 試験管を、爆発物でも扱うかのように慎重に受け取り、陽は鞄を床に下ろす。

 ガス室に入る気持ちで病室の洗面所のドアを開け、伊家を抱えて入った。

 ドアは開けたままだ。
 


 全員が再び、零斗も上半身を起こし、その様子をじっと見る。
 陽はコルク栓を開け、伊家猫の口に近づけて傾ける。
 それを、伊家は躊躇無く一気に煽った!
 
全員が息を呑み、試験管から全ての液体が無くなる。
 


 同時に伊家猫は倒れた。

 紅謳が素早く無言、かつ無表情で廊下に出て行く。

 ぴしゃり、と病室の引き戸が閉められた瞬間、伊家は1単語だけを発した。


「………ぶ。」
 ぶ?


 慌てて陽が試験管をゴミ箱のビニールに突っ込み、洗面所から飛び出してドアを閉めた。

 だがそのドアの隙間から、洗面所から離れた竜海のところにまで、眩暈さえ起こるほどの強烈な匂いが広がってくる。


ドアを開けろぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
 零斗の怒鳴り声に、反射的に白がガラス窓を全開にする。

 生ぬるい風が滑り込んでくるかわりに、クーラーの冷えた空気と、色がつきそうなほど甘い、いや、いっそ甘臭いと言った方が正しいような匂いが外に出て行く。
 空気の循環だと言わんばかりに、帝が能力で起こした旋風が功を奏した。

 短時間で甘臭い空気が個室から抜けたのだ。
 


 だが、服に少なからず染み付いたことと、洗面所に閉じ込めた(おそらく全裸)の伊家をどうするか、しばし会議は迷走する羽目になる。

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