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もうひとつの幻想 3

「こういうときこそ魔法を使うんだよ!私はこういう水に潜らないといけないことが、この先少なからずあるだろう、ということを見越して、新しい魔法を開発したのだ!」
 鼻息荒く話すハーブ。
 私は口の前に人差し指を立て、もう少し静かに話すよう促す。
 ハーブはそれで少しムッとしたような表情を浮かべたが、一応声のトーンは落とした。


「その魔法っていうのが自分たちを魔法で作った泡で包んで、水の中で息ができるようにしようってもの!その名も“キューム・バブル”!ど?いい響きでしょ?」
 とてもうれしそうに語るハーブ。
 確かに体を空気を含んだ割れない泡で包んでしまえば、水の中でも息ができるだろう。


「でも、泡で自分を包んだら水に潜れないんじゃないの?」
 私がそう突っ込むとハーブの表情、ついでに動きが固まった。
 急に立ち止まったハーブの横を邪魔そうに人々が通り抜けていく。


 しかしいつもならそのまましばらく固まっているのだけど、今日は違った。
「いや、大丈夫!ちょっと呪文に工夫すれば、泳いだりするのには支障は出ない!」
 胸を張るハーブ。


「本当?」
 それでも信じられず私が聞くとハーブは元気一杯、こう答えてくれた。


「たぶん!」


                               :


 海に潜れるかどうかわからないという問題を抱えながらも、私たちは海の上を進んでいた。


「いやぁ、お二人さん久しぶりじゃなぁ。最近はボクらぁに乗りに来るもんもおらんで、ヒマしとったんよ?。」
 少ししゃがれた声でしゃべったのは今私たちが乗っているもの。
 実は今私たちはジークというモンスターの背中に乗って海上を移動しているのだ。


「そーだねぇ、久しぶりだよねぇ、こうして海を移動するのも。小さいころはよくグルーモと一緒に海で遊んだもんだぁ。」
 ハーブがグルーモの背鰭(せびれ)にもたれてのんびりと言う。


 今乗っているジークというモンスター、彼の名はグルーモ。
 シアグラードの港にはこのジーク乗り場がある。
 町の港には5体のジークがいて、それぞれ、グルーマ、グルーミ、グルーム、グルーメ、グルーモという名前がつけられているんだ。
 なんとも安易なネーミングだが、その分覚えやすく、街の中で彼らの名を知らないものはいないとさえ言われている。


 そしてその安易な名前をつけた当人は、さっきまでのんびりしていたというに、今はなにやらごそごそと、背負っていたリュックの中をあさっていた。


「ハーブ、何やってんの?」
「呪文のメモ。」
 私が聞くとあっさりとした返事が返ってきた。


「呪文?」
「そ。さっき言ったキュームバブルのね。メモ見なくても唱えられるけど、やっぱ見ながらの方が早いしさ。」
「何でポケットとか取りやすいところに入れてないの?すぐ使うものなんでしょ?」
「だ、だって濡れたら困るもん。」

 ハーブの言い訳に、私は思わず肩をすくめた。

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