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もうひとつの幻想 8

 人魚が人前に姿を現すなんてことはめったなことがない限りないはずだ。
 普通の人々が人魚は架空の生き物だと思ってるくらいなんだから。
 今私たちの前に彼女が姿を現したということは何かあったに違いない。


「えっとね、何か困ってるみたいなんだけど何言ってるのかわかんなくて。」
 と、ハーブがいい、ちらりと彼女を見ると、彼女は確かに何か困りごとがありそうな、少し暗い顔をした。


「ヤヅタキチョヒシシナキンベツセボ…」
 彼女は悩みを語るかのように何かを話そうとしたのだが、私には何を言ってるのかさっぱり分からず、ぽかんとした私の顔を見て彼女は途中で溜息をついて、話すのをやめてしまった。
 まるで、やっぱりあなたにも私の言っていることが分からないんですね、とでも言いたそうな顔だった。
 まさにその通りなので、私半と声をかければいいのか分からなかったんだけど。


「なんじゃ?全然分からんわぁ。僕の住んどった方の言葉じゃねーし、人魚の言葉やこぉ、よー分からんわ?。」
 同じ海に住む生き物であるグルーモにも分からないようだ。
 まぁ、人魚の存在も知らなかったみたいだから、グルーモも人魚の言葉の意味が分からないのは当然のことか。


「それでさ、ルビー。」
 またどうしたものか、と考えていうた私にハーブが声をかけた。
「確かユッキーとルビーって何かへんな言葉で話すよね。もしかしたらユッキーなら彼女の言うことが分かるような気がしたんだけど。」
 ハーブのいうことに私はぽんと手を打った。


 人型の精霊は違うが、水など物質そのものの形をしている精霊は様々な言語を知っている。
 これは話すことができない代わりに聞くことに特化したため、などといわれているが、まぁ、今は何故物質型精霊は様々な言語が分かるのかと言う謎について語っている場合ではない。


 人魚の彼女がいう言葉を私の精霊、ハーブのいうユッキーがきちんと理解できるという可能性は十分あった。


「ねぇ、ハーブ、ちょっとメモ帳とペン借りるよ!」
「うん、いいよ?!」
 私はハーブのリュックの上においてあったメモ帳と、メモ帳に挟んであったペンを手に取ると、心の中で精霊へと呼びかけた。
 精霊を呼び出すのはわざわざ声に出さなくてもいい。


 私が心で精霊に出てくるよう命じると、私の視線の先、人魚やハーブのいる少し手前の海の水が凍った。
 それを見て、人魚は驚いたように口元を手で覆ったが、ハーブは慣れたようにニコニコと笑っている。


 そして凍った海の水は、水面から飛び出て、私の前へとふわりと浮かび上がった。
「ユッキー!」
 とハーブが嬉しそうに呼ぶと、ただの氷の塊だった私の精霊は、どこか嬉しそうにくるくる回転しながら、雪ダルマの形になった。


 本来私の精霊は水の姿なんだけど、ハーブの前ではユッキーの姿になるためか氷の姿で出てくる。
 最近この精霊は主の私よりもハーブに懐いているような気がして、少し複雑なところだ。


 当のハーブはというと雪ダルマの形をした私の精霊を見て、嬉しそうに目を輝かせる。
「ルビー!インクインク!私のリュックの外ポケットに入ってる!」
「何で、メモ帳は外ポケットに入れ忘れるのに、精霊用のインクは準備万端なの?」
「た、たまたまインクを入れてただけだよ!」
 私は少し溜息をつきながらもハーブのリュックの外ポケットに手を突っ込む。


 するとキャンディーやらお菓子が入っている中にインクの入った瓶を発見した。
 私はそれを取り出し、蓋を開けると、精霊へと垂らす。
 氷へと染み込んだインクは雪ダルマの中を動き、あっという間に顔が出来上がる。
 といってもこれはただの模様だから感情は伝わるものの相変わらず喋ることはできない。


 私は精霊に次なる指示を出すことにする。
「シカサ イットメリアチアカテギ オレコリ ツナコチタヌ ノットキロノウコニ?」
 私がメモ帳を見せながら言うと精霊はインクで笑顔の形を作り、頷いた。


「ルビーなんて言ったのぉ?」
「やってもらいたいことがあるから少し形を変えてくれって言ったの!」

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