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もうひとつの幻想 13

 街へ帰ろうとして、私はすっかりと忘れていた本来の目的を思い出した。


「あ!それで、潜水艦の部品はどうしたの?」
 私たちは本来潜水艦の部品を探しにきていたのである。
 今手元に4つ、今ハーブが最後の人を見つけてきていないとなるともう一度部品を探しに海へ潜らないといけない。


「あぁ!それには心配いらないよ!この人魚さんが見つけてきてくれたから!」
 ハーブはそこで満面の笑みを浮かべ、ポケットを漁った。
 そして取り出した手のひらにはちょこんと赤い部品がのっかっている。
 私はほっと息をついた。
 今の状況では気持ちが散漫になってなかなか部品を探すどころではなかったからだ。


 そして私たちの元へ帰ってきた、精霊を見てハーブが、あ!と声を上げた。
「どしたの?」
 私が聞くと彼女は私の質問には答えず、人魚の方に向き直った。


「あなた名前はなんていうの?」
「だから私たちの言葉はあの子にはわからないんだって!」
 私が言うと、背を向けかけた人魚は軽くこちらを振り返り困ったような笑みを浮かべた。
 やはり私たちの言葉は通じないようだ。


 そこへ不意に後ろからひんやりとしたものが出てきた。
 精霊だ。


「わ!」
 びくっと驚いて振り返るハーブは、すぐ目の前にあったメモ帳に反射的に視線を走らせた。
「ミアラ?」
 ハーブが読み上げた言葉に、私の前にいた人魚は少し驚いたような顔をした。
「あなた、ミアラっていうの?私はハーブ!ハーブだよ、ハーブ!ハーブ!」
 ハーブがとても明るい表情を浮かべて何度も自分の名前を言った。
 


 するとおそるおそるといった表情で人魚が
「はーぶ?」
 と呟いた。
「そうそう!ハーブ!」
 ハーブは嬉しそうにぴょんぴょんはねながら自分を指さした。
 その様子を見てどうやらハーブというのはこの黄緑頭の変な奴の名前だというのを彼女は理解したのか、笑顔でうなずいた。
 


 そしてちらりと私を見る。
「あぁ、こいつはねルビー!ルビー、ルビー!」
 私の顔を指さし、ハーブは何度も私の名前を繰り返した。
 するとさっきよりは自身のある顔で彼女は
「るびー!」
 と呼んでくれた。
 


 これが意外に嬉しい。
 私の顔も自然とほころんだ。


「ユッキー!」
 今度ハーブは精霊を指さし名前を言い始める。
「ゆっきー!」
 今度は一発で覚えたらしく、人魚は嬉しそうにユッキーの名前を呼んだ。
 当の精霊はというと何やら照れくさそうな表情を浮かべている。
 手のほうも少しもじもじと指を絡ませた。



「そんで・・・グルーモ!」
 と今度はグルーモの顔を指さす。
 さっきまでの深刻な話の時は一人蚊帳の外だった彼も、今はお互いの名前を教え合っているのだと理解した今は、ようやく仲間に入れたからか、とても嬉しそうな顔をした。
「ぐるーも!」
 人魚は嬉しそうに言うと、パシャパシャと水しぶきをあげながら泳ぎ回った。


 そして次に顔を上げたときとびっきりの笑顔で手を振りながら
「マタネ!」
 と言って海の中へと去っていった。


「またねっていうのは人魚の言葉と私達の言葉って意味変わらないんだね!」
 ハーブがもう一度嬉しそうに言ってぴょんと跳ねた。
 彼女はこれから自分たちの家族の元に帰って、今日あったことを報告するんだろうか。
 今日はハーブっていう変な子と会って、ユッキーっていう不思議なのとであって、終始仏頂面の子もいて・・・といったような話をするのだろうか。


「そんじゃ、ルビー!早く街に帰ろう!」
「よっしゃ、もう帰るんじゃな!急いどるみたいじゃけぇ、とばしていくで!つかまっとかれーよ!」
 グルーモはハーブの声を聞くやいなやそう言い、方向転換を始めた。


 私は精霊にもう戻っていいと伝える。
 すると精霊の体は溶けて海へと還った。
「バイバイユッキー!」


 ハーブはいつの間にか手にインクの瓶を持っており、そこにユッキーに垂らしていたインクがすっと戻っていった。
「ハーブって無駄なところで準備いいよね。」
「…無駄って言うなぁ!」


 もう少しこういった準備の良さを冒険中に発揮してほしい。

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