スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

もうひとつの幻想 23

「クイット!」
 後ろに立っていた少女を見て、私が第一に声を上げた。

「姉貴!」
 すると眠そうだった彼女のグリーンの目がぱっちりと開いた。
 そうか、私は姉貴とよばれていたのだっけか、と少し苦笑する。


「いつ帰ってきたんですか?!」
「一昨日。ここに来たのは昨日の夜だけどね」
 私がいうとクイットはとても嬉しそうな顔で私に近寄ってきた。
 ハーブやフロートも久しぶり、と声をかける。


「クイット、もう体は大丈夫なんですか?」
 そんなクイットを見てフローラが心配そうな顔で聞いた。
「え?クイットなんかあったの?」
 さっきまで食べることに夢中だったハーブは耳ざとくフローラの言葉を聞きつけた。
 さっきも一言久しぶりと言っただけだったのに。
 意外と周りの話を聞いてるんだな。
 


 それにしても、私もフローラの今の言葉は気にかかった。
 クイット怪我でもしたのだろうか?
 それとも病気?


「あ、いや、何でもないんですよ。ちょっと魔力を多く使っちゃっただけで・・・」
 クイットは何か言いづらそうな笑みを見せる。
 あまり聞かない方がいいような話題だろうか。
 ただ、魔力不足くらいなら、すぐに回復するし、大丈夫だろう。
 ハーブもあまり無理しないでね、と一言言ってから、皿へと視線を戻した。


「クイット、食欲あります?」
 そこへ再びフローラが口を開く。
「う?ん、あんまりお腹好かないな。何か温かい飲み物もらえる?」
「じゃぁ、蜂蜜ミルクでも用意しますね」
「ありがと」
「あ、私も!」
「あたしも!」
 クイットとフローラが飲み物の話をしていたのを再び耳ざとく聞きつけた、ハーブ、そしてフロートが元気いっぱい手を挙げた。


「ルビーさんは?」
 嫌な顔一つせず、フローラはにこにこと優しい微笑をたたえ私を見た。
「それじゃ・・・みんなもらうみたいだし、私ももらおうか」
 私が言うとフローラはまた優しげな微笑を浮かべ、厨房へと去っていった。


「それで今日もまた仕事してきたんですか?」
 クイットはハーブの横へと座り、聞いてきた。
 ハーブはちらりと私を見る。
 ハーブは食事に集中したいようなので、私がさっきまでのことを説明することになった。


 部品探しのこと、人魚と出会ったこと、ユナさんから聞いた話・・・彼女は目を輝かせて聞いている。
「すごいですね!やっぱり世界にはまだまだ知らないような生き物がいるんだ!」
 クイットはうっとりとした目つきを浮かべる。
 楽しい冒険へと思いを馳せているのだろうか。


 なかなか冒険というのは楽しいと一言で言い切れるような簡単なものではないが、楽しいことは楽しい。
 いろんな出会いや、出来事があって、スリルも満点。
 まぁ、その分とても危険なのだが。


「それで、これからそのスカッシー掃除に行くところなんだけど、メンバーがこの3人だけだと、心許ないと思っていたんだ」
 そこまで話したところで、フローラが飲み物を持って帰ってきた。
 「どうぞ」と、フローラが私たちの前にマグカップをおいた。
 マグカップの中のミルクからは甘い香りが漂っている。
 一口のむと、ふんわりと柔らかい甘みの中に深みのある不思議な味が口中に広がった。
 今まで食べたことのないような甘みだ。
 蜂蜜ミルクと言っていたから、蜂蜜が入っているのだろうが、何の蜜なのだろう?


「これおいしい!」
 私がカップの中の白い波を眺めていると、ハーブが感嘆の声を上げた。
「ほんとだ!今までと違うね!」
 フロートやクイットもおいしい!と声をあげる。
 ちらりと隣のフロートをみると既にからになった皿と、おかわり!とコップを突き出す彼女の姿があった。
 ハーブをみると彼女も同じポーズ。
 ちなみにハーブの皿も既に空だ。


 まだ食事が終わっていないのは私だけ、彼女らが蜂蜜ミルクを飲んでいる間に早く食べてしまわねば。

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

yamattulann

Author:yamattulann
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。