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もうひとつの幻想 32

「クイット、そろそろ光を緩めていい。今フロートとリクが向かっていった」
 私が言うとクイットはパチリと目を開けた。
 途端あちこちで走っていた閃光が少し弱まる。


「先輩の力を見せてあげよう。よく見ておくんだ」
「はい!」
 クイットは少しかすれた声を出し、慌てて少し咳込んだ。


「大丈夫?」
「うん、大丈夫。喉に何か詰まってただけ」
 駆け寄るフローラにクイットは微笑む。
 しかしその笑顔も少し元気がない。


「まだ無理してはいけません。少し休んでいてください」
 渋々といった様子でクイットがうなずくのを確認して、私は視線を前に戻した。


 眼下ではフロートが恐ろしい勢いで剣を降りまわしているのが見える。
 時折剣から一筋の赤い光が延び、次に瞬間には爆発が起き、砂煙と一緒にスカッシーが舞った。
 できるだけスカッシーを傷つけないようにと言っておいたが大丈夫だろうか。


 相手は悪い奴ではないのだ、こちらの都合で殺すのは間違っている。
 その点をあいつはきちんとわかって手加減しているだろうか。


 リクの方もリクの方で手になにやら赤いものをちらつかせ、海岸に近づいては、スカッシーの集団にそれをぶつけている。
 その赤いものをぶつけられた場所ではなにやら火柱があがったり、爆発が起きたりと彼も結構暴れたい放題していた。
 

 

 まったく、二人に下をまかせて大丈夫か?
 気絶させる程度で十分なのだからあまり大暴れしなくてもいいのだ。


「ルビーさん、そろそろ、一回流した方がいいのでは?」
 私がため息をついていると、フローラの声が後ろから聞こえた。
「そうだな、そろそろ頃合いか」
 二人が暴れすぎないようにそろそろ一回気絶したスカッシーを海に帰すことにしよう。


「リク、フローラ!帰ってこーい!流すぞぉー!!」
 ハーブが眼下に向かって叫ぶ。
 下ではフロートがなにやら言っているがよく聞こえない。


 そういえば、フロートがこの丘に上がってくる方法を考えていなかった。
 しかし、そんな心配は無用だったようで、フロートの背後にリクが近づく。
 リクが手を差し出した。
 それに気づきフロートがリクの手を取る。
 こうしてフロートをどうにかリクの乗る板へとのせ、二人はえっこらやっこらこちらへと昇ってきた。


「どああぁ、魔力が切れるぅ!」
 と叫びながらリクがフロートと共に私たちの上を飛び越え、背後に落ちた。 
 どうもリクの乗る板の魔力が切れてしまったらしい。


 が、私はそんなことを気にかけている場合ではない。
 今こそ私の出番だからだ。


 後ろに落っこちている二人のことは後のメンバーに任せ私は大きく深呼吸し、集中する。
 目を閉じ、心の中で精霊を呼び、遠い海へと魔力をとばした。


 大波をイメージする。
 水が大きく膨らむ姿をイメージする。
 小さなものを飲み込んでいく渦巻きをイメージする。


「うわ、みろよ!あれ!」
「もしかして、あれユッキー?」
 フロートやハーブの声がする。
 目を開けると、普通はお目にかかれない、大波が見えた。
 その波の威圧間は遠目からでも半端ではない。  


 我ながら驚く。
 私の魔力はいつの間にかここまで高まっていたのか。
 いや、さっきクイットの精霊に対して抱いた感情を私の精霊も感じ取ったのかもしれない。
 その感情を上回る力を今私の精霊は見せてくれようとしているのかもしれない。
 精霊は術者の魔力ではなく、術者の魔力で現れてくれる別の何か大きな意志なのだ、私はそう感じた。


「こ、これこっちくるけど俺たちは大丈夫なんだろうな?!」
「大丈夫に決まってんだろ!ルビーの精霊だぞ!」
「ほらあんたその板かしなさいよ!私が魔力入れてあげるから!」
「あ、魔力入れてくれるんならこっちの球のほうも・・・」
 背後からは波をものともしない会話が聞こえる。


「姉貴・・・いや、姉さん。やっぱり姉さんにはかないません。私もユッキーみたいな精霊を育てたいです」
 大波が海岸へとたたきつけられる瞬間、いつの間にか横に立って海を眺めていたクイットがいった。
 驚いて彼女の横顔をみると、彼女はこちらを向いて、にっと笑った。


「よしよし、いい考えだ。精進したまえ」
 彼女の頭をぽんぽんとなでると、彼女はとてもうれしそうな笑顔を見せた。
 精霊にもこうしてやると喜ぶだろうか。

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