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もうひとつの幻想 34

 フローラはローブの内側の服から何やら紙切れを取り出す。
 きっとそこに呪文がかかれているのだろう。
 私は彼女の集中の邪魔をしないよう、少し距離をあける。


「ミヌツコリエ ハネアフタコヲラ イチクワセツ ミボエアフコルワヒノト・・・」
 ここまでが炎を出す呪文。
 普段ならここで、魔法名であるダジル・フレイム!とか、目映き炎よ!とか、それと似たような意味の言葉を言えば魔法が発動する。
 しかしこれから例の魔法の一片とやらを付け足すのだろう、フローラはまだ魔法を発動させなかった。


「ヘワロ ウネミモドノケ ゴカウナサモシヤイヌ ”チョウ”ホタキンロ、目映き炎の変わり身よ!」
 変わり身。
 今の呪文を翻訳すれば、接続文句の後、”姿を変えよ 本来のままでなく 我が声の示すように ”チョウ”へと変われ”と言ったことになる。
 ”チョウ”と言うところが強調されていたところと、文句的に、チョウというのは私たちの言葉をそのまま使ったのだろう。


 そして、下の海岸で一際大きな爆発が起こったのと、フローラが手を差し出したのはほぼ同時だった。
 フローラの手からほとんど白に近い炎が生まれる。 
 目映い光を放つそれは、熱はさほどないにしろ、眩しさは相当なものがあった。
 そしてフローラはその炎を海岸に向けてそっと投げる。
 ゆっくりと落ちていく光。
 その光はスカッシーたちの頭上で落ちるのをやめた。


「あれ?どうなってる?」
 ハーブが崖下をのぞき込みながら言う。
 ただの炎が落下を止めたのだから驚くのも無理はない。
 しかし既に私には、今の呪文の効果がわかった。


「見て!」 
 ハーブが炎を指さす。
 見ると炎が少し膨らんでいる。


「何が起こるの?」
 クイットが固唾をのんで見守っている。
 ハーブもクイットも呪文の翻訳はしていないようだ。
 そういえばクイットが呪文を唱えているのを見たことがない。
 もしかするとクイットも呪文についてはほとんど知らないままなのかもな。


 私はクイットの横顔をみた後、再び、海岸へと落ちていった炎へと視線を戻す。
 そして私が視線を戻すのと同時に炎が弾けた。
 辺りへ閃光が散る。


「あ!」
 私以外その場にいた全員が声を上げた。
 下にいるフロートとリクも何事かと顔を上げる。
 そして飛び散った炎の欠片はゆらゆらと宙を舞い始めた。


「あれって、蝶?」
 クイットが目を細めている。
 私も少しかがんで光を見つめた。


 遠目からはよく分からないが、その光の飛び方は蝶とそっくりだ。
 呪文にあった”チョウ”とは蝶を指していたらしい。


「綺麗です・・・けど、あまり効果はなさそうですね」
 フローラの言うとおりだった。
 最初は十分効果のありそうな炎がでてきて、期待したのだが、残念ながら今は分散してしまい、いくつもの蝶の形をした小さな光が舞っているだけだ。
 その光は遠目から見ても十分美しく、近くで見ると壮観な光景なのだろうが、残念ながら眩しさはあまりない。
 スカッシーに対する攻撃には適さなかったようだ。

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