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もうひとつの幻想 42

「お二人さん!あれ見てみぃ!」
 さっきまで海の中を猛スピードで泳いでいたグルーモが少しスピードを落とし、海中から少し顔を出した。
 日がくれかけ、薄暗い海に何か丸いものがぼんやりと見える。


「ミアラだ!」
 よく目を凝らすと海に浮いているように見えたそれは、人魚の頭だということが分かった。
 彼女は私達が気づいたことをしると大きく手を振った。 

 ハーブがそれに手を振り返す。


「迎えにきてくれたんだね!」
 ハーブがにこにことこちらを振り返る。
 よかった、彼女がいれば薄暗い海も安心だ。
 彼女に海中を案内してもらおう。


 グルーモが彼女に近づくと、彼女は満面の笑みを見せた。
 私は早速精霊を呼び出す。
 相変わらず人魚の彼女は何やらよく分からない言葉を話すので、精霊に翻訳してもらおうとしてのことだ。


「ハーブ、メモ帳」
 私はそれだけいうとハーブに手を差し出す。
 ハーブは何やらむっとした表情を浮かべつつも私にペンとメモ帳、ついでにインクを取り出した。
 私は無言でそれを受け取る、と同時に海面から精霊がいつもの雪だるまの、そして氷の手が飛び出す。
 私はなれた手つきで、雪だるまにインクを垂らし、氷の手へとメモ帳とペンを渡した。


「マラサッナベツヘ!」
 人魚の言葉に精霊はすぐさまペンを動かす。
 ”ハヤカッタ ネ”


「あぁ、急いできたんだ・・・と伝えてくれ」
 思わず素で会話しそうになりあわてて精霊に翻訳を頼む。
 人魚は精霊の書いた文字を見て、何やらいうと頭を下げた。
 今のは翻訳してもらわなくても分かる。
 ありがとう、というような礼を言ってくれたのだ、きっと。


「あぁ、そうじゃ、二人とも!」
 今まで黙っていたグルーモが不意に口を開いた。
「どしたの?」
 ハーブが声をかけるとグルーモは何やら口をもごもごと動かした。


 いったい何をしようというのだろう?
 そして彼はしばらく何やら口を動かした後、海面に何かはきだした。
 それは白く光る牙のようなもの。


「グルーモ歯が抜けた!!」
 ハーブが見たら分かることを大声で叫んだ。
 しかし牙は沈むことなく、何故か海面にぷかぷかと浮かんでいる。


「いや、こりゃぁ、僕のはじゃぁないんよ、こりゃ通信機じゃ」
「ほぉ!そんなものがグルーモの口の中に!」
 私は驚くハーブを後目に、その通信機をとってくるよう、精霊に心の中で指示を出した。
 手の形をした精霊が海水でその牙型通信機を軽く洗って私達の元へと持ってくる。


 私とハーブはそれを手に取りしげしげと眺めた。
 なるほど、確かに小さなボタンのようなものがいくつかついている。
 しかも牙の先に切れ目が入っており引っ張ると伸びた。


「わ!これアンテナ?」
 今時アンテナ付きのものとは珍しい。
「こりゃ、僕らぁの特注でなぁ。一個作るのに結構なお金と時間がかかるんじゃわ。じゃけぇ、これかなり古いものなんよ。僕の前におったんが使っとったんじゃって」
 前にいた奴?
 と言うことは私達がシアグラードにくる前に、私達の知らないジークが港にいたんだろうか?
 私達があの街にきたときには港のジーク乗り場には何もいなかったんだけど、その前に誰かいたのかも。


「とりあえずこれ持っていかれぇ。とりあえずどっかボタン押したら港の方に連絡が届くけぇ、帰るときになったら連絡せられぇな」
 なるほど、グルーモも私達のことを考えていてくれたんだ。
「ありがと!グルーモ!」
「ありがとう」
 私達はそろって礼を言うと、早速ハーブが魔法を使い、私達は海へと飛び込んだ。


「それじゃぁ、僕はしばらくしたら帰るけぇな」
「うん!行ってくる!」
 私はグルーモに手を振り、海へと潜る。
 グルーモは大きな口の橋をにっとあげて片方の鰭をパタパタ降った。


 くるりとグルーモの方を向いていた体を方向転換させると、ミアラが潜ってくる。
 彼女は私達へ手招きすると薄暗い海の中を迷いなくすいすいと泳いでいった。
 私達は顔を見合わせ、その後を追う。


 彼女を追い、泳いでいくにつれ、魔力の流れが不穏なものに変わっていくことに私は気づいた。

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