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もうひとつの幻想 56

 こうしてようやく私達は街へと帰ってきたのである。
 私達は港で何度も彼らに礼を言い、また会おう、と彼らと別れた。


 しかし思えば意外と短い冒険だった。
 今までは何日もかけて冒険をしてきたが、今日は長いようで短い冒険をした。
 


 けれど、疲れだけは一人前だ。
 街に帰ってきて安心した途端、どっと疲れが押し寄せてきた。
 暗い街は夜だという事を痛く実感させるもので、余計眠気を誘う。
 私達は何度も瞬きを繰り返しながら、ラムザへと帰りついた。
 


 ラムザはまだ明々と明かりがつき、中にはいくらか客の姿が見えたため、私たちは建物裏にある階段から2階に上った。
 私達はもう話す気力もなく無言で部屋に入る。
 私達の部屋は少し特殊で、ラムザ内では珍しく二人部屋である。
 これも私達が昔からラムザにいるためだ。


 部屋に入り、適当に床に荷物を置いて、汚れた服を着替えた。
 風呂に入るのは明日でいいだろう。
 私達は倒れ込むようにして布団に入ると、泥のように眠った。


 :


 次の日、何かゴソゴソと不気味な音がし、私は目覚めた。
 ハーブはまだすーすーと寝息をたてて眠っている。
 私は眠い目を擦り、むくりと起き上がった。
 昨日リザードマン2体と戦ったせいで、剣を持っていた右腕が痛いが、これはいつもの事だ。
 私はもう少し寝たいと思う自分を叱咤し、布団から出た。


 そして欠伸と伸びをし、ゆったりと室内を見渡すが、私はある一点を凝視した。
 それは部屋の入り口近くに投げるように置いたハーブの鞄である。
 リュックとは別の、ショルダーバックで、中には救急用品やお菓子などが入っている。
 それが今、もぞもぞと動いているのだ。


 私はそこで昨日の出来事をはっきり思い出した。
 霞がかかったようにぼんやりしていた頭が覚醒する。 
 あの鞄の中には、例のもやもやが入っている!
 私は一人でハーブの鞄を開ける勇気がなく、ハーブを起こす事にした。


 :


 ハーブを起こすのにだいぶ手間取り、しかも、ハーブは気持ち悪がってなかなか動こうとしないので、結局その鞄と向き合うのは、ラムザの共同浴場に入って、風呂と着替えをすまし、そして朝食を食べ、みんなに一通り話した後だった。
 みんなというのは、フロートやフローラ、クイットの事である。
 リクは今日仕事があるらしく、早いうちから出かけていったそうだ。


 そして私達の事を話すのと同時に、フロート達からハウリナちゃんとスカッシー達のその後の話も聞いた。
 ハウリナちゃんはひたすらユナさんに叱られた後、ユナさんも連れフロート達とハウリナちゃんは、海岸に戻ったらしい。
 するとハウリナちゃんが来るとそれまで静かだった海岸にスカッシー達が集まってきたのだとか。
 しかもハウリナちゃんはいつの間にかスカッシー達と意志疎通ができるようになっており、スカッシーはすっかりハウリナちゃんに懐いて、ハウリナちゃんが命じれば、すんなりと海へと帰っていったというのだ。


 にわかには信じがたい話だったが、みんなが口を揃えて言うので、嘘ではないのだろう。 
 そしてその現象を見て、ユナさんはいつにも増して研究に没頭しているという。
 ハウリナちゃんも迷惑をかけないなら、という事で、スカッシー達と会う事を許可されたらしい。
 スカッシー問題はめでたし、めでたし、という事だ。


 しかし、ハーブの鞄の中はめでたくない。
 すこぶる不気味だ。
 私は2階の私達の部屋から鞄をラムザの店内、要するに1階へ持っていき、みんなの前にそのもぞもぞする鞄を晒したのである。


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