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もうひとつの幻想 57

「これが、例の?」
 フロートが息を呑んだ。


 鞄は相変わらず時折もぞもぞと不気味に動く。
 鞄はチャックでぴっちり塞いであり、中のもやもやが出てくる気配はない。


「これ、このまま放っておくわけにはいかないですよね」
 フローラが少し青ざめた顔で呟く。
 その言葉を聞いてハーブが悲しげな表情を浮かべた。 
 あの鞄の中にはハーブ大好物のお菓子がいろいろと詰まっているのだ。
 それを手放したくはないのだろう。


「それなら開ける他ないな。私が開けてやる」
 すると、フロートが肩を回しながら、前へ進み出た。
 こういう時はとてもフロートが頼もしく見える。
 よかった、彼女が単純な奴で。


「こーいうのは思い切りが大事だ。一気に開けるぞ!」
 フロートは鞄を手にをかけ、振り返った。
 私たちは思わずカウンターにしがみつく。
「爆発する訳じゃあるまいし。んなびびるなよ」と、言うフロートの顔も引き攣っている。  
「あ、開けるなら早く開けろ!」
 私は少し上擦っている自分の声に、少しイラつきながらも、フロートに言った。


 みんな大げさなほど腰が引けている。
 私もそんな中の一人なのが情けない。


「んじゃ、開けるぞ!」
 フロートがチャックの摘みに手をかける。
 ゴクリと唾を呑む私達。


 そしてフロートはえいやっとばかりにチャックを開けた。
 途端白いもやもやが勢いよく飛び出す。
「うわぁあぁっ、わわぁっ!」
 フロートがばたばたと私たちの元へ帰ってくる。


 そして、全員がひしと見つめる中、もやもやがこちらを向いた。


 つまりは。

 もやもやに。

 顔が。

 あったのである。


 :


「はぁ、これが…ドラゴン?」


 私の前に座るユナさんは全く信じていない目で、私、そして私の横に浮かぶもやもやを見た。
 私は今ユナさんの研究所の応接室で、ユナさんと向き合って座っている。


 ハーブは人魚のミアラに報告に、フローラはラムザの仕事、フロートは野暮用、クイットはキトンと一緒にどこかへ出かけていった。
 そして私がユナさんへ報告に行く係となったのだ。


「その…自称ドラゴンの魂とかいうそれが最奥の宝箱に入っていた、と」
 私は今洞窟内での冒険をユナさんに報告したところだ。


 そして今度はもやもやについて話している。
 そのもやもやというのは顔があり、そして ―――
「そうだよ! 何でみんな信じてくれないんだ! 僕はドラゴンだぞ! 悪い奴のせいで体をとられちゃったんだ! どうにかしてよ! 僕を助けてよ!」
 ――― きぃきぃとそれは喋った。


 そう、それは昨日まで何の変哲もないもやもやだったというのに、今日鞄から出してみれば顔と小さな手のような突起が付いていたのである。
 手、といっても同じようなもやもやで、相変わらずその体を触る事はできなかったのだけれど。
 ちなみにその顔というのはくりくりした黒い瞳に、小さな口が引っ付いているだけで、牙が生えているとか、翼があるとか、そういうドラゴンっぽいところは微塵もない。
 顔がついた、ただのもやもやである。


「そう、ドラゴンね、なるほど。アナタの研究もする必要があるかしら」とユナさんがもやもやを一睨みすると彼は思いきり縮こまってしまった。
 まったく、気が小さいなら出しゃばるんじゃない。


「とにかく、この間街に出現した光のドラゴンの話を…」
「ドラゴン?!」
 ユナさんが話を切り出したところに、またもやもやが割って入る!
「僕はグラン・ビルド火山っていう火山に住んでいたんだ! あそこに僕の体がある! もしかしたら異変に気づいてお母さんやお父さんが来てるかも!」


「グラン・ビルド火山ですって?」
 意外や意外、彼の話にユナさんが食いついた。
 少し得意そうな顔をする彼は妙に憎らしく見える。
 小突いてやりたいが残念ながら彼には触れない。


「そうだよ! 僕はそこに住んでたんだ!」
 彼の言葉に、ユナさんはむうんと考え込んだ。

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