スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Another fantasy ? 152 ?

 町外れ、海沿いの小さな林の入り口に、彼女の家はあった。

 木とツタで作られた小さなその家は、人一人暮らすのがやっとという大きさで、壁を覆う棚にはたくさんの本が詰まっていた。

 彼女は目が見えないので、きっとこの本は全て魔本、要するに目が見えなくても魔力を利用することで内容を知ることができるものだろう。

 それらの本を見る限りでは詩集が多いらしく、僕とクイット、ひのたん、マオ君というメンバーでそこを訪ねたときも、彼女はその一冊を膝に広げ、ページをなぞっていた。



「メイル、今日はケイも一緒なんだけどさ」

 クイットは親しげに彼女に呼びかける。

 彼女は床に腰掛けており、膝に詩集を開いたまま置くと僕の方を向いた。



 僕は軽く頭を下げる。

 といっても目の見えない彼女には僕が頭を下げたのは見えないだろうが。



「用事?」

 耳を澄ませないと聞こえないような声で、メイルさんは言った。  

 クイットがあんた話しなさい、という目で僕を見る。



「クレディーに暇だったらあなたの元に行け、と言われたんですが」

 僕はきちんと敬語で話しかける。

 すると彼女は家の隅、窓際に置いてある机の方に手を伸ばした。



 机には花の形を模したライトスタンドや、ノート、紙の束がいくつか置かれている。

 彼女が魔法を使ったのか、部屋の中を風が吹き抜け、彼女の手元に数冊のノートや紙束が引き寄せられた。



 どういった魔法を使ったのかはわからないし、彼女の表情に変化はなく、ノート類を手に取りその表紙にふれながら、無言で僕らに座るよう促した。

 クイットは慣れたように部屋の入り口近くにおいてあったマットを床に引く。 



 僕はクイットについてその上に腰掛けた。

 僕の背後についていたマオ君やひのたんも神妙な顔、マオ君の場合は動きで、敷物の上に落ち着いた。



 そして、メイルさんは引き寄せた数冊のノート類のうちから一つ、紙束を僕の方へよこした。

 風の渦に乗っかったような形の紙は、木から落ちる葉っぱみたいにくるくる回りながら飛んで僕の手に収まる。



 表にも裏にも何も書かれておらず、薄いくてほんの数枚しかないその紙をめくってみたけれど、何も書かれていない。

「これは?」



 僕がどうしたものか迷いながらメイルさんに言うと、彼女は一言だけ、魔本、とささやくような声を出した。

 するとクイットが横から手を伸ばし、紙の表紙にふれて目を閉じる。



 一瞬の間をおいて、パチリと目を開き、見えた!と僕を見た。

 僕もそのクイットの反応から察しがつく。

 どうもそのノートは魔本と同じ要領で見るようだ。



 思えばこの部屋に筆記用具は何もない。

 それもそのはず、メイルさんは目が見えないのだから紙に文字をきちんと書くことができないのだ。

 だから魔力で紙に文字や絵を描く。

 魔力で書かれた物は魔力を持って読むものだ。

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

yamattulann

Author:yamattulann
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。