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Another fantasy - 164 -

「ちょっとだけなら、いいかなぁ?」
 クイットが小さな声で言った。
 横を見れば、クイットの指先が今まさに木へと触れようとしているところ。


「あ、ちょっ、まっ!」
 僕はどうすべきか、何を言うべきか分からないながらも動いた。
 しかし、僕より早く動くものがあった。
 いきなりクイットの指先に何か降ってきたのだ。


 何が落ちてきたのか認識するまもなく、瞬時にクイットの表情が変わった。
「ぎゃわわわ!! 虫?! 虫ぃ?!」
 クイットは両腕を振り回し、めちゃくちゃに動き回っている。
 さっきのは何か虫だったんだろうか。
 白くて、大きかったような気もするけど、こんな大きな木なんだ、どんな虫が住み着いていても不思議じゃない。


 僕はモンスターかもしれない、と考えながら慌てず、慎重に辺りを見回した。
 すると僕の頭になんだか軽い感触が。
「ん!?」
 僕は頭の上をさっと払ったが何の感触もない。
 頭を押さえてみたけど、特に何か乗っている様子はない。


「師匠! なんか変な奴がいましたぜ!」
 マオ君が僕の頭上を指さしながら言う。
「どんな奴?」
 僕は周囲に目を配りながら聞いた。
「あの、原住民っす! ノムとかいうやつ!」
 ノム?
 そういえば原住民はみんな似たような名前を持っていたっけ。
 なんとかノム、とかなんとかナムみたいな感じの。


「あれ、名前知ってるノ?」
 不意に甲高い声が上から降ってきた。
 見上げると、また何か降ってくる。
「あ、虫じゃない?」
 クイットが髪をボサボサにしたまま、近づいてきた。
 少し目が涙目だ。


 僕がクイットの方から目線を戻すと、そこには小さな人がいた。
 確かにメイルの家で見た原住民の映像そのままの見た目だ。
 彼はマオ君の言ったとおり、ノムという名前を持ち、原住民達の中で一番背の低い家系の人物だろう。


「さっき黒い人がいたノ。あの人木、傷つけたノ。僕らも吹き飛ばしたノ。あの人誰なノ?」
 彼は細い小さな目で僕らを見上げた。
 どこか警戒しているように見える。


「僕らもあの人を知らないんだ。でも、今はもういないよ。僕らの・・・・・・」
 一瞬ビシウスを仲間と言うべきか知り合いと言うべきか悩んだ。
 仲間というには距離があるし、知り合いというのも少し遠い気がする。
 でも、クイットの前だ。


「仲間が追い払ってくれたからさ。木を狙ってたわけじゃないと思う」
 この木が一体どんなものか詳しいことは分からないけど、特別なものなのは分かる。
 彼女がこの木を狙っていた可能性はないわけじゃない。
 しかし、木を狙うなら僕らの前には現れずに直接向かったはず。 
 きっと彼女は僕らのうちの誰かに、何か目的があって、木には特に用はないはずだ。


「そうなノ? じゃぁ、安心なノ」
 今の説明だけで、安心してくれたらしい彼は、指笛を吹いた。
 すると、わらわらと何かが降ってきて、根っこの間からもたくさん出てきた。
 慌てて辺りを見ると、みんな原住民達だ。


「ようこそナ!」とか「よくきたニ」とか、「ゆっくりしてネ」とか「久々のお客さんだヌ」とかいろんな声が聞こえる。
 それぞれ、語尾に決まった音をいうのが癖らしい。
 癖、というより決まりめいたところがある。
 たぶん、ナを語尾につけてしまう人はナムという名前の人々、という風に、語尾でどの家系の人か見分けることができるのだろう。


 それにしてもちょっとした説明だけであっという間に警戒を解いてしまった。
 彼らはかなり人がいいらしい。
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