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33?G

 目の前の広い食卓には大量の料理があった。
 私のすぐ目の前には引きちぎられ、こねられ、その上焼かれた肉らしきもの。
 どうしてこのような非道な調理ができるのか!
 しかし、出されたものは仕方がない。


「へぇ!うまそうだな!ピザとハンバーグか!」
 イラという奇妙な青年は無邪気に喜んでいる。
 どうも、彼にとってこの衝撃的な料理は慣れたものらしい。
 確かにおいしそうなにおいではあるが・・・・・・。


 ほかにも私の前には青年がピザと呼んだ薄いパン生地にいろんな具の乗ったもの、そして、ガラスでできた大きめの入れ物にはたくさんの野菜が入っている。
 私の住んでいた場所ではガラスの食器と言えば限られた場所でしか使われていなかったがイラや、メックの様子を見るに、これは普通のことのようだ。


「レーヌさんはお茶でいいですか?」
 ぼんやりとしていると、メックの母 ―― 名前をムムという ―― が、なにやら見慣れない形をした大きめの入れ物を手に持っていた。
 どうもその中に飲み物を入れているようだ。


 なにやら冷気のこもった大きな箱のようなものから取り出したそれはひんやりと冷たい空気を放っている。
 お茶でいいか?ということは、お茶以外にも何か選択肢があるのだろうか、とぼんやり考えながら私はうなずいた。
 どうも私はこの猫のような見た目の人々を目にするとうまく話せない。


「レーヌさんって、無口ですねぇ。旅人さんって、なんだか社交的な印象がありますけど」 
 ムムはほかの面々にも茶をくみながら言った。
 私は肯定も否定もできず黙る。
 するとムムはそれ以上何も質問してこなかった。


「にしてもこれ変わってるな!」
 不意に隣のイラがしゃべり始めた。
 見ると彼は手に小さなスコップのようなものを持っている。
 ただスコップといっても何かをすくう部分はほぼ平らで、持ち手のところは何かゼリー状の柔らかそうなもので覆われていた。


 どうもスプーンやフォークとにたようなものらしい。
 私の前にもそのスコップのような物が置かれ、その隣にはフォークが置いてある。
 ちなみにフォークの柄にもゼリー状のものがついていた。


「これは僕らみたいな手の人用の食器だよ」
 メックは何ともないように説明したが、私たちの向かいに座っている、彼の姉妹は怪訝そうな顔をした。
「そんなの説明しなくても当たり前でしょ?そんなことも知らないの?」
 幼げな声で、トトという子が聞いた。
 イラは思わず苦笑いを浮かべる。


「あぁ、俺はこんな手の人しかいない場所からきたから」と顔の前で手をひらひらと振る。
「そんなとこあるの?」
「あるんだな、それが」
 興味津々といった目で聞く子猫たちに、イラは笑顔で返した。


 普通なら、このような顔をかわいいというのだろう。  ただ私はどうも普通じゃないようだ。
 時たま覗く彼女らの牙にどこか恐れのようなものを覚える。 


「しかしまぁ、確かにいろんなものにとっ手がついてんな」
 確かにイラの言うとおり、先ほど飲み物をくんだ入れ物には二つ持ち手がついており、近くに見える棚やタンスも大きめのとってがついている。
 指がなくても物を持ったり、戸を開けられるように、という工夫だろう。


 しかしこうしてみると猫のような手はとても不便だ。
 紙を持つこともできない、ペンを握ることもできない。
 といってもこの世界はなにやら私の知らない便利な道具がたくさんあるようだし、そんなにも不便ではないのかもしれないな。


「それじゃぁ、食べましょう」
 さっきまで飲み物をくんだりといそいそと動き回っていたムムが席に着き、私たちは食にありついた。
 少し、肉を食べることは気が引けたが、こうなってしまった以上、もう元には戻らない。
 私は香ばしく焼けた肉の塊をいただくことにした。


 肉は皿にこぼれんばかりに積まれており、食べやすい一口サイズになっている。
「僕らは食器を使うのが苦手だから、こういう小さな物じゃないと食べづらいんだ」
 メックは器用に指の間にフォークの柄を挟み、それで肉を口に運んでいた。
 どうも手に負担のかからないよう、ゼリーのようなもので柄を覆っているらしい。 
 人間が使う分にも特に問題なく食器は使える。


「あ、お二人さん、ピザもどうぞ」
 ムムはスコップのような食器を片手に具のたくさん乗ったパンのような物をすくい、あいていた皿に載せた。
 そのピザという名前らしい料理も小さめのサイズ。


 ただ量があり、小さな丸いパンが大皿の上にいくつも乗っている。
 どうも彼女らはとてもよく食べるようだ。
 私はあまりたくさん食べる方ではないので、すぐに腹が膨れそうだが、イラは目を輝かせがつがつと食べていた。


「そういえば、レーヌさんはどこからきたんですか?」
 食べるのに夢中な子供たちを後目に不意にムムが聞いてきた。
 彼女はゆったりとしたペースで物を口に運んでいる。
 どうも彼女は私の旅についてとても興味があるようだ。
 今話をはぐらかしても、しつこく後から聞いてきそうな気がする。
 イラがちらりとこちらに視線を投げた。


「ここからずっと遠い、名もない森から」
 私は野菜を口に運びながら答えた。
 嘘は言っていない。

32?Y

「ねぇ、これからどうするのさ?」
 イラという青年にキムラと命名された女性の腕から地面におり、ボーニンという名の生き物は開口一番そう言った。


 彼の前に立つロザンナという老婆は、いつの間にか杖と一緒に小さな折りたたみいすを持っており、のんびりとした動作でそれを開くと、いすに腰掛けた。
 まだ彼らはメックという少年の家の前に出たばかりだ。


「まさか、ここで野宿?」
 ボーニンが青ざめた顔でいう。
「ギャギャ!?」
 その横でもう一人の白い生き物、かりきんも不安そうな表情を浮かべた。


(私たちは野宿だろうがなんだろうがかまわないが)
(でも濡れんのはやだな。視界がぜんぜんきかないもん)
(ロザンナさん、考え、ある?)
(さぁ?あのばあさん自己中っぽいからな?。どうだかわかんねーぜ?)
 そしてかりきんという生き物の首に掛かったペンダントからは勝手な声が漏れている。


 あたりはすでに暗く、街灯が道にぼんやりとした頼りない光を投げていた。
「あの、ロザンナさん」
「ローザでいいよ」
「あ、ローザさん。これからどうするんですか?」
 キムラ、ことKMRが聞いた。


「これから今日泊まる場所に向かう。とにかくついてきなさい」
 老婆はいすに腰掛けたまま言った。
(イスに座ってどうやって移動するって言うんだよ)
(まさかそのままはこんでもらうつもりかな??)
(さすがにそれはないでしょ。何か考えがあるはずよ)


 不可解な表情の面々に見守られる中、老婆は手に握った杖を軽くふった。
 すると、老婆とイスが、一瞬紫色の光に包まれ、その次の瞬間ふわりと浮き上がる。 
「あ・・・・・・!」
 驚くボーニンたち。


 そんな彼らとは裏腹に冷静な表情のままの、老婆は、軽く彼らを見やると、静かに道を進み始めた。
 先ほど町に向かうときよりはずっと移動する速度は速い。


(なるほど。イスは乗り物、というわけか)
(ほんと、あいつなに考えてんのか、わかんねーな)
(でも、気、使ってない、訳、じゃない)
(う?ん、彼女は彼女なりに僕らのこと考えてくれてるんじゃな?い?)
「ギャギャ」


 唖然としていたボーニン達だったが、とにかく老婆には何か考えがあるのだろう、ということで彼女の後をついていくことにした。

31?O

「二階はどの部屋も空いてるから好きなところを使ってくれればいいよ」
 僕はレーヌさんと兄さんを二階に案内して言った。


「あ、この階段の裏はトイレと物置になってるから」
「おぅ。にしても結構広いな、この家」
「まぁね、僕らは兄弟が多いから」
 兄さんは僕の前に並んだ三つの扉を開け放しながら言った。


「今は家を出てていないけど、年の離れた兄さんがいたんだ」
「年が離れた、って、それが普通だろ?」
「いや、僕らは一度に何人も生まれるのが普通だから」


「じゃぁ、さっき妹って言ってたのは・・・・・・」
「生まれ出たのが僕の方が少し早かっただけで、みんなほとんど同時に生まれてる。僕は四つ子、だね」
 僕が言うと兄さんは細かく何度かうなずいた。
「そうか、なるほどな」


「・・・・・・この部屋を使っても良いか?」
 僕らが話をしているのにほとんど耳を傾けず、不意にレーヌさんが言った。
 レーヌさんは廊下の一番奥の部屋の戸を開けている。
 そこは今は長期の仕事で家にいない父さんの部屋だ。
 父さんが大事にしていたものや、必要としていたものは全部持っていったから、たぶん使っても大丈夫だろう。


「あぁ、いい、ですよ。その部屋、奥にももう一つ部屋があって、そこが寝室になってます」 
「そうか、ありがとう」
「じゃぁ、くつろいでいてください。夕食になったら呼びます」
「わかった」


 必要以上の会話は毛頭する気がない、とでも言うように、レーヌさんはさっさと部屋の中に入って行ってしまった。
「素っ気ないな、相変わらず」
 兄さんがレーヌさんの様子を見て、ぼそりと言った。
「あれじゃモテな・・・・・・」
「なんか言ったか?」
 いきなりレーヌさんがドアから顔をのぞかせた。


 壁も距離もあるのに、今の兄さんの言葉が聞こえるなんて!
 そういえばレーヌさんの耳は普通の人と比べて長いし先が少しとがってる。
 さっき顔の布をはずしたとき気づいたけど・・・・・・。


「いや!なんでも!」
 兄さんはあわててレーヌさんに向かって首をふり、レーヌさんはすぐに顔を部屋に引っ込めた。
 ばたんと音を立てて戸が閉まる。


「・・・・・・んじゃ、俺はこの部屋にするわ」
 気を取り直して、兄さんが示したのは階段に一番近い部屋だった。


「ん、分かった。あ、ちょっと待って、レーヌさんに電気の付け方教えてない」
 さっき部屋から顔を出したときはどう見ても部屋に電気をつけているようではなかった。
 もう外も暗くなってるし、電気をつけないと、周りが見えないんじゃないか?


 僕がレーヌさんの入った部屋に急ぐと、兄さんも後ろをついてきた。
 一応部屋をノックする。


「あの、レーヌさん、入りますよ?」
 僕は返事を聞く前に部屋に入った。


 見ると、レーヌさんは父さんが机について書類を書いたりしているときに使っていた、ローラー付きのいすに腰掛け、窓の下にいた。
 案の定電気はついていない。


「あの、電気つけなくても・・・・・・?」
 僕が話しかけると、ふっとレーヌさんは僕らの方を向いた。
「電気?」
「あ、明かりです」


「あぁ、そうだな、どうやってつけるんだ?」
 そこでようやくレーヌさんは僕に焦点があったような顔をした。
「ここの、扉の横のスイッチを押せば明かりがつくようになってます。もう一回押せば消えますし」
 僕は説明しながら電気をつけた。
 お母さんが暇を見つけてはこまめに掃除していたから、部屋はものが少ないところを除いて父さんがいたときのままだ。
 机や本棚の中はずっと前から変わらない。


「後は・・・・・・特に言うことなかったと思います。なんかあったら言ってください。この部屋の中のものは自由に使っていいですけど、汚さないようにはしてくださいね」
「分かった」
 レーヌさんは素直にうなずく。
 いすに座ったまま、こちらに来る素振りは見せない。


 僕らはそそくさと部屋を後にした。
 やはり僕はレーヌさんに嫌われているようだ。


 最初槍を突きつけられたときは本当に驚いた。
 そのときの目ではっきり分かった、僕は本当にいやがられているって。
 あそこまではっきりと拒絶されると、何もいえない。
 僕はレーヌさんと一定の距離を置くことしかできない。


 そんなことを考えながら僕は兄さんが決めた部屋に入った。
「この部屋もドアの横にスイッチがあるんだな」
 兄さんは手探りでスイッチを見つけると、明かりをつける。
 この部屋も父さんの部屋と同じく母さんによって掃除されていた。


 兄さんがよく読んでいたマンガや、携帯ゲーム機、おもちゃなどが棚に入っていて、兄さんはまずそれに興味を示す。
 この機会に兄さんの暮らしていた世界のこととかを聞いてみようかな。
 きっと今僕が暮らしているこことは全然違う世界なんだろう。

30?P

「あ、お母さん」
「なぁに?」
 冷蔵庫らしきものをあけ、中を物色する背中に少年が声をかけた。


「赤い羽って知らない?」
 うぉ、ストレートに聞いたな!
 まぁ、驚いた表情を露骨に出したのは俺だけだったけど。
 少年とにこにこしているキムラさん以外みんな能面のような無表情だ。
 まぁ、ボーニンたちがその表情なのは仕方ないけど。


「さぁ、知らないわねぇ。急にどうしたの?」
「えっと・・・・・・」
「私が探しているんです」
 困った少年にキムラさんが助け船を出した。


「私の知人が赤い羽、というものを探していて、私も是非見てみたいと思っているのです。何か知りませんか?」
 知人、まぁ、ボーニンのことか?
 ボーニンを見ると、さっきと少し表情が変わっていた。
 やっぱ生きてるんだな。
 なんか・・・・・・やっぱこいつ不気味。


「そうねぇ、私は知らないわねぇ。あ、でも知り合いに鳥に詳しい人がいるわ!」
 冷蔵庫からいろんな食品を引っ張り出し終えたお母さんは、さっき何かをおいた棚に走った。
 そしてその引き出しをあける。


「えっとねぇ、クアーブ、クアーブ・・・・・・」
 お母さんは引き出しから指の間に挟んで取り出した紙を眺めた。
「あ、これよ、これ」
 キムラさんに一枚、そして少年につきだしたその紙。


「お兄さん、受け取って」
 この人たちは手が肉球だからかなりいろんなことが不便そうだな。
 俺は紙を受け取り、それを見た。


 そこには平べったいドームみたいな建物の写真と、簡単な地図、そして、クアーブ鳥類研究所、と書かれていた。


「クアーブ?」
 少年が聞くと、お母さんは大きくうなずき「そうよ、鳥の博士。母さんの同級生」と笑顔で語った。
「なんか聞いたことあるな」
「そりゃ、テレビにもでていたもの」
「あ!いつだったかお母さんがわいわい言いながら見てた!」
「そうそう!」
 お、その博士っていうのは結構有名な人か、相当鳥に詳しい人だな!


「彼に聞けば何かわかるかもしれないわ!」
 お母さんはどこか機嫌良さそうにキッチンへと戻る。
「なるほど・・・・・・」
「ねぇ、僕も勉強にその博士のところに行きたいんだけどさ!」
「うん?そうね・・・・・・。じゃぁ、おみやげ持っていってもらおっかな?」お母さんは後でバス代渡すね?、と明るい声で言った。


「じゃぁ、そろそろあたしは・・・・・・」
 そこでおばあさんがよっこらしょと立ち上がった。
 でも、そろそろっていったって俺たちはどこにけばいいんだ?
 俺は金も持ってねぇし、ほかの人たちだってそれは一緒だろう。
 少年は家がここだし、レーヌさんはここに泊まることが決定したけど・・・・・・。


「あ、母さん!あの、兄さんも泊まってもらって良いかな?」
「え?」
 俺とお母さんは同時に声を上げた。


「あぁ、そうね、後一人くらいならかまわないわ」
「そうかい。じゃぁ、泊まっておいで」
 戸惑う俺をよそに話は進み、ばあさんも本当のおばあちゃんみたいな優しげな笑顔を浮かべた。
 このばあさん・・・・・・役者だな。


「じゃぁ、あたしはそろそろおいとまさせてもらおうかいの」
「では私も」
 キムラさんも立ち上がり、ボーニンたちを腕に抱えた。


「あら、もう帰るの?」
 お母さんが再びキッチンからこちらへ戻ってくる。
 そしてキムラさんと名残惜しそうに話し始めた。
 どうもお母さんキムラさんを気に入ったらしい。


「あ、ところで」
 不意にばあさんが振り返り、お母さんに聞こえないような小さな声で言った。
 驚いたことにばあさんの目は元の青色に戻っている!



「この近くにものがたくさんあって広い場所はないかい?」
「え?えっと、近くに広いゴミ捨て場があるよ」
「うむ、結構」
 ばあさんは少年の返事に満足そうにうなずいて、きびすを返した。


「ではおいとまさせていただきますねぇ」と、極普通のおばあちゃんみたいな声を出すと、出口に向かっていった。
「それじゃ、私も」
 キムラさんもお母さんに一礼し、出口へと向かっていった。


「それじゃ、レーヌさんと兄さん。部屋を案内するよ」

29?P

「あ、お邪魔しています。私メック君のゲーム友達なんです。今日はゲームキャラクターの格好をしてきたんですよ?あ、腕は義手なんです。強そうでしょ?」
 肩に生えたとげなんかは特殊メイクなんですよ、とすかさずキムラさんは対応する。
 すげぇ、よくも短時間でそこまで当たり障りのない回答がでてくるもんだ。


「あらぁ、義手なの?生まれつき?」
「そうなんですよ?。でも生まれたときからこうだったんで、ぜんぜん大丈夫です。まぁ、この義手は大きすぎて使いにくいですけどね?」
 ふつうに会話してるし。
 後ろの少年そっくりの女の子らしき子たちも興味津々だ。


「最近外に修行に行ってるときに知り合ったんだ。すごいでしょ?」
 少年が言う。

 修行って、一体普段から少年はなにやってるんだ?

 やっぱ鍛えてんのかな。



「あら、そこの方もゲーム仲間?あと、この人もコスプレ?」
 わ、この世界にもコスプレって言葉があるんだ。
 いや、そういえば今思ったけど、名前からして外人だよな、みんな。
 もしかしてこれって自動的にみんなの言葉を翻訳されたのを、俺は聞いているのかもしれない。
 でも、どうやって翻訳するんだ?
 魔法とか?


 そんなことを考える中、お母さんらしき人物はレーヌさんとばあさんをみた。
「あたしは、この子のおばあちゃん。今この子が遊びに来てくれているの」とばあさんは俺の方に体を傾けた。


 いやいや、目の色とか違うから、そんな嘘すぐばれるだろ、と思って、ばあさんの顔を見ると青かった目が真っ黒。
 いやあぁ、魔法って怖いぃ。
 あ、いかん、顔には出さないようにしないと。


「それでこの方は旅をしている方だそうで、今晩泊まるところをさがしているそうなんじゃ。しかしあたしの家は狭くてのう。この方を泊めてあげられないじゃろうか?」
 ばあさん今度はレーヌさんについても語りだしたぞ。
「あら、そうなの?」
 嘘だなんてこれっぽっちも思っていない様子でお母さんはレーヌさんをみる。


「そうなんだ。すまないが泊めてもらえないだろうか」
 そうレーヌさんが言っていると、お母さんはレーヌさんが持っていた槍をじっとみた。
 今槍はレーヌさんの横に転がしてある。


「あぁ、これは護身用です。歩いて旅をしているので」とレーヌさんは頭からかぶっていた真っ白い布を脱ぎ、槍の刃の部分をそれで包んだ。
 そして最終的にどこかぎこちない笑みを浮かべる。
 まぁ、レーヌさんは極度の猫嫌いみたいだもんな。
 だいぶ無理してるんだろう。


 しかし、レーヌさんは不思議な髪型だな。
 なんていうか昔の人みたいだ。
 くくった髪をお折り返してる、っていうか。
 斬新だな。
 それにしても冷たい顔つきなのが隠せてないぜ。


「そうですか。うちは部屋がいくつか余ってるので、どうぞ泊まっていってください」
 お母さんは目を細め口の端をあげた。
 あ、猫の笑顔ってこんな感じなんだ。


「わぁ、この人形暖かいよ!」
「それに柔らかい!」
「あ、背中にかっこいい模様がある!」
 あ!ボーニンたちが、二匹の猫さんたちの手に!

 ボーニンとかりきんちゃん、えらい汗だ。



「こら!トト、ノノ!その人形は・・・・・・」
 少年言葉に詰まる!
 俺の・・・・・・とはいえないよな。


「それは私のです。そのお人形高かったんですよ」
 にっこり笑顔でキムラさんが言った。
 とたんその横に立っていた少年のお母さんの顔が一瞬だけだったけどものすごく険しくなる。
 女の子たちはぱっと手を離し直立した。


「あ、えっと、トトとノノ。僕の妹」
 少年が紹介すると「よろしくです?」と、二人は軽く頭を下げ、そそくさと、俺たちがいる部屋の横にあった扉に各自はいっていった。


「あ、母さんお帰り」
 そんな二人のはいっていった扉の向かいにもまた二つ扉があり、その扉のうち片方からまた顔がでた。
 そしてその顔は俺たちを一別すると、すぐに引っ込む。



 最初この家に入ったとき、少年がその部屋に入って誰かと話をしていた。
 そのときの話し相手が今の人物だろう。
 やっぱり顔は少年にそっくり。
 でも、模様が全然違うな。


 お母さんと、さっきの子は前髪みたいな黒くて長い毛が生えていて、お母さんは黒と白の毛。
 少年の妹の一人は黒と白、もう一人は真っ白な毛色。
 少年だけが全身真っ黒みたいだ。


「それじゃあ、私は夕飯の準備でも」とお母さんが手首に下げていたものを部屋の入り口近くにある棚の上へ置いた。
 俺の視線の先には、大きな長机が見え、その奥にはキッチンらしきものや冷蔵庫っぽい機械が見える。
 この居間らしき部屋とキッチンはつながっていて、ここから料理風景を見ることができるようだ。

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